日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
硬膜外脂肪腫症によって脊髄腔内注射の実施に困難をきたした小児ALLの一例
保坂 郁実笠井 慎玉井 望雅渡邊 敦赤羽 弘資合井 久美子犬飼 岳史
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2024 年 61 巻 1 号 p. 86-89

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抄録

ステロイドは急性リンパ性白血病(ALL: acute lymphoblastic leukemia)のkey drugであり,ALL治療では脊髄腔内注射のために腰椎穿刺が反復して実施される.硬膜外脂肪腫症(SEL: spinal epidural lipomatosis)は硬膜外腔における脂肪組織の過成長を特徴とする病態であり,小児ALLのステロイド療法におけるまれな合併症で,腰椎穿刺に困難をきたしうる.今回,再寛解導入相におけるステロイド投与の直後にSELを発症した5歳のALL男児例を経験した.症例は13回目の髄腔内注射の施行時に腰椎穿刺が困難で,神経症状はなかったものの脊髄のMRI検査でSELの診断基準に合致する所見を認めた.1ヶ月後の再評価で硬膜外脂肪層の縮小と十分な髄腔間隙を確認し,髄腔内注射を実施した.したがって,ALLの治療中に腰椎穿刺が困難となった場合には,SELを合併症として考慮するべきである.

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© 2024 日本小児血液・がん学会
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