小児がんの生存率は高所得国で80%以上である一方,低中所得国では30%以下と大きなギャップがある.小児がんの大部分は低中所得国でも入手可能なジェネリック医薬品,手術,放射線治療により治療可能であり,WHOは2030年までに全世界で小児がんの生存率を60%以上にすることを目標としている.
国際NGOジャパンハートは2018年にカンボジアで40床の小児医療センターを立ち上げ,固形腫瘍を中心として小児がん診療を無償で提供することとした.日本の小児外科専門チームや病理医の協力により,現地の手術技術は向上し,正確な病理診断に基づいて治療を実施することができた.2020年より日本の専門家との遠隔コンサルテーションを開始し,適切な治療方針の決定に加え,現地医療者の学びと成長につながっている.さらにカンボジア全体で小児がんの生存率が向上するよう,国内の小児がん治療施設との連携を強めている.2022年度には年間100人近くの小児がん患者を受け入れ,生存率を50%以上にすることができた.2025年にはプノンペン郊外に新病院を設立し,カンボジア国内だけでなく,ミャンマーやラオスなど周辺国からも患者を受け入れる予定である.日本で培った小児がんの経験や知識を生かし,NGOに参加して海外での小児がんの生存ギャップを改善することは大きな喜びであり,何よりもずっとやりたかったことができて自分自身の幸福につながっている.このような活動が若手を含む医師のキャリアの一助になれば幸いである.