2025 年 62 巻 1 号 p. 59-62
症例は11歳の女児である.易疲労感と黒色便を認め,息切れと顔色不良の増悪のために近医を受診した.血液検査でHb 6.8 g/dLの貧血を認め,腹部造影CT検査で小腸の腫瘤像を認めたため,精査・加療目的に当院へ搬送された.小腸の腫瘤が出血源と考え,摘出術を施行した.術中所見では,空腸に粘膜下層から腸管壁内外に向けて突出する充実性の腫瘤を認めた.腫瘤と腫大リンパ節を含めた小腸部分切除術を施行した.病理所見から,炎症性筋線維芽細胞性腫瘍inflammatory myofibroblastic tumor(IMT)と診断した.IMTは全身のあらゆる部位に発生する中間悪性群の腫瘍である.診断には免疫組織染色が有効であり,特にanaplastic lymphoma kinase(ALK)陽性を示す症例が多い.治療は完全切除が重要で,切除術後は予後良好であるが,局所再発や転移の報告もあるため画像検査による長期的な経過フォローが必要である.補助化学療法は行っていないが,切除術後10ヶ月の現在,再発なく経過している.