2025 年 62 巻 1 号 p. 80-83
症例は生来健康な9歳女児.右臀部から右下肢の疼痛を契機に腰部脊柱管内の硬膜内髄外腫瘍に気づかれた.腫瘍は肉眼的に全摘出され,組織学的にmesenchymal chondrosarcoma(MCS)と診断し,後にNCOA2 break apart probeを用いたfluorescence in situ hybridizationでsplit signalを認めた.術後にビンクリスチン・ドキソルビシン・シクロフォスファミド/イホスファミド・エトポシドの交代療法と50.4 Gyの局所陽子線照射を行い,診断後1年2ヵ月時点で無再発生存している.脊柱管内発症のMCSは極めて稀であるが,既報ではその6割は小児例である.診断は主に組織学的所見に基づいて行われるが,疾患特異的な融合遺伝子としてHEY1::NCOA2が同定されており診断に有用である.脊柱管内MCSの臨床像は脊柱管外MCSと異なる可能性があり,今後の症例の蓄積が望まれる.