壊疽性膿瘡は,有痛性の紅斑や硬結で始まり,急速に進展して水疱,膿瘍化と潰瘍形成に至る重症皮膚感染症である.しばしば免疫不全患者に発症し,緑膿菌菌血症が原因となることが多い.今回私たちは,急性リンパ性白血病の化学療法による好中球減少時に発症した壊疽性膿瘡の2症例を経験したので報告する.1例目は9歳女児で,強化療法後に右上腕に壊疽性膿瘡を発症した.タゾバクタム・ピペラシリンにより治療し,好中球の回復とともに2週間で病変は改善した.2例目は12歳女子で,寛解導入療法中に左大腿に壊疽性膿瘡を発症した.セフェピムを開始したが,深い潰瘍と肉芽腫病変に進行し,局所デブリードマンが必要であった.白血病に対する化学療法を継続していたため治癒には5か月を要した.化学療法による好中球減少時に,発熱を伴う有痛性の紅斑や水疱を認めた場合は,壊疽性膿瘡を念頭に緑膿菌に有効な抗菌薬投与を含めた速やかな対応が必要である.