日本小児血液・がん学会雑誌
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シンポジウム1:造血器腫瘍における分子標的薬を用いた治療戦略
小児急性リンパ性白血病の新時代の標的治療
加藤 元博
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2025 年 62 巻 2 号 p. 140-145

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抄録

小児急性リンパ性白血病(ALL)の次世代の治療戦略として標的治療への期待が高まっている.そのひとつが,腫瘍細胞の病態の根幹であるゲノム上から生じた異常分子を直接の標的とする分子標的療法である.例として,チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の導入により,フィラデルフィア染色体陽性ALL(Ph+ALL)の治療成績は大幅に向上した.さらに近年ではPh-like ALLなどへの応用も試みられている.また,KMT2A再構成陽性ALLに対するメニン阻害や,ALK融合遺伝子を持つ造血器腫瘍に対するALK阻害剤なども有効性を示唆する報告がなされている.ゲノムプロファイリング検査の臨床導入とそれに基づく薬剤開発の進展により,より多くの症例で適切な分子標的治療を選択できるようになることが期待される.さらに,免疫学的な機序を利用し,特定の表面抗原を標的とした治療が再発・難治ALLの実臨床に導入されている.遺伝子改変T細胞や抗体薬物複合体は再発ALLの治療を変革させている.また,二重特異性抗体であるブリナツモマブは,再発・難治ALLへの有効性が示された他,初発ALLへの導入が臨床試験で試みられている.さらには,Ph+ALLに対するTKIとの併用など,標準治療を大きく変える可能性がある.標的治療のもとでの層別化因子の同定や,有効性を規定する免疫環境の探索など,取り組むべき課題は残されているが,標的治療の導入により,ALLの治療さらなる飛躍を遂げると期待される.

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