造血細胞移植前の前処置として病的細胞の根絶と宿主の免疫機能抑制を目的とした全身照射(Total body irradiation: TBI)や全リンパ節照射/胸腹部照射(Total lymphoid irradiation: TLI / Thoraco-abdominal irradiation: TAI)が実施されている.当院では2019年1月より線量率を200 MU/minに下げたTBIを開始しており,TBIもしくはTLI/TAIを実施した小児患者の治療成績について遡及的に解析した.
2019年1月から2024年4月に当院にて同種造血細胞移植の前処置としてTBIもしくはTLI/TAIを実施した19歳以下の29例を対象とした.照射時の月齢の中央値は109ヶ月(range, 22–238)であった.8 Gy以上の高線量分割照射を用いた骨髄破壊的前処置は13例で,TBIは全例12 Gy/6 fr.であり,16例の強度減弱前処置ではTBIが12例(2–6 Gy/1–3 fr.),TLI/TAIが4例(全例3 Gy/1 fr.)であった.観察期間中央値は24.0ヶ月(range, 0.9–64.9)であり,3例が死亡(うち2例が移植後半年以内に呼吸状態悪化で死亡),自己造血回復2例,原疾患再発を1例に認めた.grade 2–4急性GVHDを14例,慢性GVHDを3例,CTCAE ver.5 grade 3以上の晩期障害としてネフローゼ症候群を1例,高尿酸血症を1例,治療関連続発性悪性疾患(MDS)を1例認めた.
観察期間が短く背景や治療内容が様々であるが,本解析結果は許容範囲内と考えられた.腫瘍制御や生着率を維持しつつリスク臓器への影響を低減するような方策が期待される.
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