2025 年 62 巻 2 号 p. 146-152
家族性胸膜肺芽腫がDICER1異常に関与することがHillらにより報告され,同遺伝子の病的バリアントを背景に胸膜肺芽腫に加えて,甲状腺癌,小児嚢胞性腎腫,anaplastic sarcoma of the kidney(ASK),鼻腔軟骨間葉性過誤腫など,主に小児・若年で良性および悪性の様々な腫瘍が発生することが知られた.さらに,これら腫瘍発生の背景に高率にDICER1のヘテロ接合性生殖細胞系列のバリアントがあることが知られ,DICER1症候群と称されるようになった.DICER1病的バリアントに関連する腫瘍は,様々な臓器に多彩な組織学的所見を示すが,しばしば次のような組織学的特徴を有している:(1)胎児期の発生段階の組織像に類似した低分化な腫瘍細胞からなる成分,(2)横紋筋や軟骨,神経外胚葉成分など多様な分化能を示す成分,(3)嚢胞成分,もしくは嚢胞成分と充実性成分の混在からなる腫瘍,(4)病理組織学的および分子生物学的に,過形成または前がん病変の段階から浸潤性の肉腫へと進行する.現状非常に多くの病理診断名からなるDICER1異常関連腫瘍をDICER1関連肉腫(DICER1-associated sarcoma)と呼称を統一することも提案されている.特徴的な組織所見からDICER1異常関連腫瘍を診断することで,適切な遺伝子検査や遺伝カウンセリングへ繋げることが望まれる.