2021 年 12 巻 7 号 p. 905-909
はじめに:人口の高齢化にともない,歯突起骨折患者が増加しているが,当院に入院した歯突起骨折患者の治療経験について臨床的特徴と治療成績を報告する.
対象と方法:当院に入院し歯突起骨折と診断された53例について後顧的分析を行い,II型とIII型に分けて,年齢,受傷原因,併存症,神経障害,治療法,治療結果を比較検討した.
結果:II型は28例でIII型は25例であった.平均年齢はII型で60.4歳,III型で77.2歳と,III型で高かった.男性の割合はII型で60.7%,III型で40%であり,II型では男性が多かった.受傷原因はII型で交通事故の割合が高かった.外科的手術がII型では17例(61%)に,III型では3例(12%)に行われていた.逸脱症例を除いてII型では27例中21例(78%)で,III型では21例中17例(81%)で骨癒合が確認された.最終的に偽関節となったのはII型で4例,III型で1例あったが,神経障害の悪化をきたすことはなかった.
結語:II型とIII型を比較すると,II型では若年,男性,交通事故,手術的治療の割合が高かった.II型では手術を,III型では保存的治療を原則として良好な成績が得られた.