Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
12 巻, 7 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
Editorial
原著
  • 権藤 学司, 渡辺 剛史, 田中 雅彦, 堀田 和子, 田中 貴大
    2021 年 12 巻 7 号 p. 905-909
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:人口の高齢化にともない,歯突起骨折患者が増加しているが,当院に入院した歯突起骨折患者の治療経験について臨床的特徴と治療成績を報告する.

    対象と方法:当院に入院し歯突起骨折と診断された53例について後顧的分析を行い,II型とIII型に分けて,年齢,受傷原因,併存症,神経障害,治療法,治療結果を比較検討した.

    結果:II型は28例でIII型は25例であった.平均年齢はII型で60.4歳,III型で77.2歳と,III型で高かった.男性の割合はII型で60.7%,III型で40%であり,II型では男性が多かった.受傷原因はII型で交通事故の割合が高かった.外科的手術がII型では17例(61%)に,III型では3例(12%)に行われていた.逸脱症例を除いてII型では27例中21例(78%)で,III型では21例中17例(81%)で骨癒合が確認された.最終的に偽関節となったのはII型で4例,III型で1例あったが,神経障害の悪化をきたすことはなかった.

    結語:II型とIII型を比較すると,II型では若年,男性,交通事故,手術的治療の割合が高かった.II型では手術を,III型では保存的治療を原則として良好な成績が得られた.

  • 北原 功雄, 白鳥 寛明, 米谷 博志
    2021 年 12 巻 7 号 p. 910-916
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

    非骨傷性頚髄損傷で運動麻痺を呈し,急性期除圧術を施行した全16症例は,すべて転倒による軽微な過伸展損傷により重度の症状をきたした.とくに高齢で高度脊髄圧迫を伴った症例で成績は不良であった.中心性頚髄損傷による下肢運動麻痺は比較的軽度で,膀胱機能障害,歩行障害に改善傾向があった.しかし上肢機能の回復が悪くADL獲得は不十分であった.急性期除圧術に関しては,脊髄除圧術を受傷後3日以内に施行した例では,高度脊髄圧迫例でもやや改善傾向にあった.しかし脊髄除圧術を受傷後4日以降に施行した症例では改善回復は乏しく,とくに脊髄圧迫率の大きい高齢者では改善を認めなかった.周術期合併症に関しては,大きな問題はなく,早期離床に妨げをきたした症例はなかった.非骨傷性頚髄損傷に対する急性期脊髄除圧術の治療成績は,高齢者で高度の脊髄圧迫を伴った場合には,早期の脊髄除圧術と早期離床とリハビリテーションが重要と考えた.

  • 光山 哲滝, 大田 快児, 梅林 猛, 河野 龍太
    2021 年 12 巻 7 号 p. 917-925
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:首下がり症候群の手術における適切な手術法はいまだ確立されていない.

    対象と方法:手術治療14例の術後嚥下障害とinstrumentation failureについて検討した.

    結果:術後嚥下障害を2例に認めた.また,instrumentation failureは頭側で1例,尾側で1例に認めた.

    結語:過度の頸椎前彎形成と高齢者の多椎間前方固定術が術後嚥下障害の危険因子であった.後方固定術の下端がC7まであることと頭尾側のスクリュー強度の不均衡がinstrumentation failureの原因であった.

  • 原 毅, 高橋 良介, 尾原 裕康, 岩室 宏一, 下地 一彰, 志村 有永, 佐藤 達哉, 宮川 慶, 奥田 貴俊, 野尻 英俊
    2021 年 12 巻 7 号 p. 926-932
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

    Duragenは多孔性のcollagen matrixにより形成されている吸収性の人工硬膜で,内部に血小板が浸潤することでフィブリン塊による膜を形成し,早期の髄液漏防止効果が得られる.Duragenの脊椎脊髄手術における髄液漏防止効果について,後方視的に検討した.Duragenを用いた脊椎脊髄手術34例中,髄液漏発生は2例であった.Duragenは脊椎脊髄手術において髄液漏予防に有用と考えられる.水との親和性により様々な使用方法が期待できる素材と考える.

  • 古高 慎司, 藤原 靖, 橋口 直史
    2021 年 12 巻 7 号 p. 933-937
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)後神経障害に対しballoon kyphoplasty(BKP)併用顕微鏡視下後方除圧術を行っている.

    対象と方法:BKP併用顕微鏡視下後方除圧術を施行した31例を対象とし,神経障害を伴わないOVFに対しBKPを施行した72例を対照群として設定した.

    結果:局所後弯角に有意な変化はなかったが,JOAスコアは有意に改善した.対照群と比較し,矯正角度は有意に小さかった.

    結語:本術式では十分な矯正は得られなかったが,JOAスコアは有意に改善した.

  • 鈴木 喜貴, 飛田 哲朗, 鵜飼 淳一, 安藤 智洋, 佐藤 公治
    2021 年 12 巻 7 号 p. 938-946
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症症例における脊椎固定術後偽関節の治療は難渋する場合が多い.今回我々は,偽関節に伴う終板破壊や椎弓根スクリューの緩みを伴った症例に対して,腓骨による終板補強と同種骨による経椎弓根的impaction bone graftを行い良好な結果が得られたので報告する.症例1.61歳.男性.透析歴35年.T5-L5固定術後のL4/5偽関節.緩みを認めた椎弓根スクリューを抜去し,経椎弓根的impaction bone graftを行った後,椎弓根スクリューを再挿入した.固定範囲は腸骨まで延長した.左前方から椎体間ケージを抜去した後,新たにLLIFケージを設置し,終板欠損部とケージの間隙に腓骨を挿入した.症例2.83歳.男性.骨粗鬆症性第4腰椎圧迫骨折に対しL3-5PLF,L4椎体置換術後偽関節.症例1と同様の手技で椎弓根スクリューを再挿入し,椎体間インプラントを抜去後に頭尾側終板を腓骨で補強し新たに伸延型ケージを設置した.症例3.70歳.女性.L2-5でのLLIF+PLF術後偽関節.症例1,2と同様の手技で椎弓根スクリューを再挿入した.固定範囲は仙骨まで延長し,L4/5椎間板腔に骨移植を行い,L5/SにはPLIFを行った.いずれの症例においてもインプラントの緩みなく,術後6ヶ月において良好な骨癒合が確認できた.経椎弓根的同種骨移植によりスクリューの支持性が格段と向上し,腓骨による終板補強はケージの沈み込みを抑えることができた.本法は偽関節手術のみならず骨粗鬆症症例における脊椎固定術において有用な方法となる可能性がある.

  • 神澤 佑哉, 小坂 健二, 藤原 翔, 大西 諭一郎, 森脇 崇
    2021 年 12 巻 7 号 p. 947-951
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎後方除圧術患者に対して,術前後の歩行パラメーターを検討した.

    対象と方法:腰椎後方除圧術を施行した11例に対して術前,術後1ヶ月に光学式歩行分析装置オプトゲイトを用いて歩行を解析した.評価項目は各歩行パラメーター,JOAスコア,ODI,歩行時VASとし,術前と術後1ヶ月を比較した.

    結果:ODI,JOAスコア,歩行時VAS,歩行率が有意な改善を認めた.

    結語:腰椎後方除圧術により,歩行率が改善した.

  • 石原 昌幸, 谷口 愼一郎, 谷 陽一, 朴 正旭, 足立 崇, 串田 剛俊, 安藤 宗治, 齋藤 貴徳
    2021 年 12 巻 7 号 p. 952-957
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

    目的:AIS遺残型脊柱変形(adult idiopathic scoliosis:AS)に対する側方経路椎体間固定(lateral interbody fusion:LIF)と経皮的椎弓根スクリュー(percutaneous pedicle screw:PPS)を用いたcircumferential Minimally Invasive Surgery(c-MIS)の短期成績を検討した.

    対象と方法:2018年から2019年に手術し18カ月以上経過観察可能であった6名(女性5名.男性1名)を対象とした.検討項目は固定椎体数,固定上位椎体(UIV),固定下位椎体(LIV),LIF施行椎間数,平均出血量,手術時間,各種パラメーター,術前後ODI,周術期合併症とした.

    結果:UIVはT4:2例,T7:2例,T9:2例でありLIVは全例骨盤であり平均固定椎体数は13.3椎体,平均LIF施行椎間数は4.5椎間であった.平均出血量は723 ml,平均手術時間352分,LLは術前11°が術後50°,PI-LLは術前39°が術後0°に,PTは術前32°が術後15°,TKは術前19°が術後40°,SVAは術前128 mmが術後25 mm,CAは術前66°が術後25°,C7CSVLは術前52 mmが術後7 mmに改善した.ODIは術前51が最終26に改善した.合併症は術後2ヶ月でS2AIのセットスクリューが外れたものを1例認めた.

    結語:AIS遺残変形に対するcMISは低侵襲かつ良好な矯正が得られ,短期成績は概ね良好であった.側弯の矯正ではなく冠状面及び矢状面のバランスの矯正をすることでcMISであっても十分な矯正が可能である.

  • 土田 隼太郎, 北浜 義博
    2021 年 12 巻 7 号 p. 958-965
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

    隅角解離を伴う椎間板ヘルニアに対する手術療法は広範囲の椎弓切除を必要とすることや,それに伴い固定術を施行することなどが報告されており,特に骨病変の除去が必要な場合は困難を伴うことが多い.全内視鏡下ヘルニア摘出術は7 mm径のカニューラを経椎間孔的に挿入し,硬膜腹側に直接的に到達してヘルニア摘出が可能な術式であり,本病態において神経をほとんど牽引せずに骨病変も含めたヘルニアの安全な摘出が可能である.通常の椎間板ヘルニアと異なり,骨病変は鉗子だけでは切除が困難なことがあるが,カニューラ先端で神経を保護しながらハイスピードドリルを使用することで安全に切除が行えた.

  • 中村 周, 伊藤 不二夫, 三浦 恭志, 柴山 元英, 星 尚人, 吉松 弘喜, 伊藤 全哉, 倉石 慶太, 山田 実
    2021 年 12 巻 7 号 p. 966-972
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

    内レトラクターは,経皮的全内視鏡の作業用内腔内に2本の器具を挿入して操作することが可能であること,その先端を作業用内腔の最辺縁部に挿入できること,回旋だけで先端の位置を大きく動かすことができること,という特性がある.内レトラクターを用いた経皮的全内視鏡下後方進入椎間板ヘルニア切除術は,それらの特性により頸椎と腰椎でいずれにおいても有用であった.

  • 竹末 祐也, 山崎 昭義, 勝見 敬一, 溝内 龍樹, 石川 裕也, 佐藤 雅之, 坂本 徹夫
    2021 年 12 巻 7 号 p. 973-978
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:我々はsublaminar taping(SLT)による制動術を腰椎後方椎体間固定術に併用することで,隣接椎間障害発生を予防できるかを検討した.

    対象と方法:2012年から2018年にL4/5/S1後方椎体間固定術を施行し,1年以上経過観察した115例を対象とした.L3にSLTによる制動術を併用した群(SLT群)42例,併用しなかったL4/5/S1固定術単独群(対照群)73例の2群に分けた.臨床評価として,手術時間,出血量,JOA改善率,再手術率を検討した.画像評価として,global alignment,Pfirrmann分類,すべり量,椎間板高,後方開大角の術前から最終観察時の変化量と,画像的ASD(L3椎体すべり3 mm以上の増加,前屈時のL3/4後方開大角5度以上の増加,L3/4椎間板高3 mm以上の減少)の有無を2群間で比較した.

    結果:臨床評価において,手術時間,出血量,JOA改善率,再手術率は2群間で差を認めなかった.画像評価において,すべり量と後方開大角の変化量は,SLT群の方が有意に減少した(共にp<0.05).画像的ASD発生は,SLT群で6例(14%),対照群で23例(32%)とSLT群で有意に少なかった(p<0.05).

    考察:SLTによる制動術を併用することで,すべり量と後方開大角の増加を抑制し,また,画像的ASDの発生率は低下した.ASDによる再手術を予防できる可能性がある.

  • 伏見 一成, 岩井 智守男, 野澤 聡, 秋山 治彦
    2021 年 12 巻 7 号 p. 979-983
    発行日: 2021/07/20
    公開日: 2021/07/20
    ジャーナル フリー

    目的:下位腰椎(L5/S1またはL4/5)におけるTLIF(腰椎経椎間孔的椎体間固定術)において,近年われわれは,支持面積を大きくするためブーメラン型ケージを2個使用することで支持性を向上し,癒合率の改善や沈み込み防止を図っている.その有効性を検証するため,ケージ支持面積の違いが臨床成績に与える影響を検討した.

    対象と方法:(L4/5またはL5/S1)1椎間の椎体間固定術が行われた患者56例を対象とし,後ろ向きに検討した.弾丸型ケージ2個使用群:22例(弾丸2個群),ブーメラン型ケージ1個使用群:17例(ブーメラン1個群),ブーメラン型ケージ2個使用群:17例(ブーメラン2個群)を対象とした.椎間腔の高さを経時的に計測しケージの沈み込みおよび骨癒合を評価した.

    結果:術後12ヶ月でのケージの沈み込みの平均は,弾丸2個群:1.14 mm,ブーメラン1個群:1.63 mm,ブーメラン2個群:0.73 mmであり,ブーメラン1個群に比べてブーメラン2個群では有意に少なかった.またブーメラン1個群の4例に癒合不全を認めた.その他の臨床成績には各群間に差を認めなかった.

症例報告
feedback
Top