2021 年 12 巻 7 号 p. 1007-1011
はじめに:腰椎に発生する硬膜内髄外腫瘍の多くは神経鞘腫か髄膜腫であるが,稀に終糸から生じたependymomaやparagangliomaを認めることがある.終糸発生の脊髄腫瘍2例を症例提示し,その画像所見や術中モニタリングについて文献的考察を加えて報告する.
症例:2例ともMRI axial像で脊柱管中央部に存在する腫瘍性病変を認め,残存する馬尾神経は腫瘍により左右対称に圧排されていた.術中モニタリングはSEP(somatosensory evoked potentials),MEP(motor evoked potentials)に加えてBCR(bulbocarvenous reflex)を行った.いずれも終糸から発生する腫瘍であり,頭尾側の終糸を切断し腫瘍の全摘出を行った.病理診断はそれぞれependymomaとparagangliomaであった.
結語:腰椎硬膜内髄外腫瘍がMRI axial画像で硬膜管内の中心部に位置し馬尾神経が左右に圧排されている場合,ependymomaやparagangliomaなどの終糸発生の腫瘍が考えられる.また,終糸近傍に存在する陰部神経を温存するために術中モニタリングとしてBCRは有用と考える.