2022 年 13 巻 2 号 p. 119-125
はじめに:中下位頚椎脱臼骨折は生命・機能予後に影響を及ぼす疾患であり,その麻痺改善に関与する因子の過去の報告は様々である.本研究の目的は当院で手術を施行した中下位頚椎脱臼骨折症例を後ろ向きに調査し麻痺改善に関与する因子を明らかにする事である.
対象と方法:中下位頚椎脱臼骨折の診断で手術を施行し,半年以上経過観察可能であった15例を麻痺改善群と麻痺非改善群の2群に分類し,年齢,受傷から整復までの時間,受傷から手術までの時間,AISの推移,受傷時の局所後弯角,損傷高位椎体間転位距離,椎間板脊柱管内占拠率,SLIC scoreについて2群間で後ろ向きに比較検討した.術後平均経過観察期間は10.5ヶ月(6~41ヶ月)であった.
結果:麻痺改善群6例,麻痺非改善群9例であった.2群間に有意差を認めたのは受傷から整復までの時間のみで,麻痺改善群が有意に短いという結果であった(p = 0.027).特に受傷から12時間以内に整復し得た症例で有意に麻痺を改善しやすい結果であった.
結語:本研究の結果からも過去の報告と同様に早期に脱臼を整復する事で麻痺の予後を改善できる可能性があると考えられた.