Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
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13 巻, 5 号
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Editorial
総説
  • 玉川 翔太, 奥田 貴俊, 野尻 英俊, 高野 弘充, 佐藤 達哉, 石島 旨章
    2022 年 13 巻 5 号 p. 733-739
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    脊椎疾患や骨盤外傷など仙骨を含み固定する際のアンカーとして椎弓根スクリュー(PS)や仙骨翼スクリューが用いられる.これらはその固定力を高めるため仙骨前方の皮質を貫く方法が用いられる事が多い.しかしながら,仙骨前方を貫通したスクリューには神経血管損傷のリスクがあり,我々は前外側へ逸脱したS1 PS先端による術後L5神経根障害の2例を経験した.そこでL5神経根の骨盤内での走行を解剖学的に調査し,仙骨スクリュー挿入の際の安全域を検討した.L5神経根は椎間孔を出た後内側へ向かうものはなく,必ず外側へ向かって走行していた.また,L5神経根は仙骨翼の最前面で角度を変え,さらに外側へ向けて走行する傾向を認めた.側面像でL5神経根は仙骨翼と接して走行しており可動性に乏しいことがわかった.本研究にて,医原性L5神経根損傷を避けるため,S1 PSはS1前仙骨孔より内側へ向けて挿入し,仙骨翼スクリューは30°以上外側へ向けて挿入するべきであることが示唆された.本稿では,我々が経験した症例と解剖学的研究の結果を示し,これまでのL5神経根の解剖に関する知見とともに報告する.

原著
  • 隈元 真志, 中原 誠之, 久壽米木 亮, 井上 崇文, 吉田 享司, 古江 直也, 土方 保和
    2022 年 13 巻 5 号 p. 740-745
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:椎体形成術(VP)においては隣接椎体骨折(AVF)が臨床上の問題となるが,VPとAVFの因果関係についてのコンセンサスは得られていない.今回我々は術後AVF発症例を観察し,VPとAVFの関連を考察した.

    対象と方法:民間6病院において2012年4月から2018年6月までに単椎体にVPが施行された連続症例を術後6ヶ月間追跡した.術後1週間・1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月以内のAVF発生割合およびAVF発生までの期間を記述した.続いてKaplan-Meier法を用いてAVFの累積発生を図示した.

    結果:基準を満たした406例が研究対象となった.各時点までのAVF発生は術後1週間が29/405例(7.2%),1ヶ月が58/377例(15%),3ヶ月が71/353例(20%),6ヶ月が74/317例(23%)であった.AVF発生までの期間は中央値16日であり,1ヶ月以内の発症が58/74例(78%)であった.累積発生曲線では急峻な立ち上がりが観察された.

    結語:VPとAVFの関連を示唆する結果が得られ,術後AVFに関する更なる研究の動機付けとなることが期待される.

  • 柘植 弘光, 辰村 正紀, 蒲田 久典, 長島 克弥, 江藤 文彦, 竹内 陽介, 船山 徹, 山崎 正志
    2022 年 13 巻 5 号 p. 746-751
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎分離症は第5腰椎(L5)が好発高位で第4腰椎(L4)分離症は比較的珍しい.

    対象と方法:2014年から6年間にL4分離症と診断した41例59ヶ所(偽関節部2ヶ所を除く)を対象とした.保存療法は半硬性コルセット,運動禁止,アスレチックリハビリテーションを全例に導入した.調査項目は年齢,性別,競技種目,片側例/両側例,水平断病期分類,骨癒合の有無,治療期間とした.骨癒合率と各要素との関連をFisher's exact testで評価しp< 0.05を有意差ありとした.

    結果:平均年齢は14.5歳,男子31例,女子10例で,競技はサッカーが最多であった.片側例21例,両側例20例で,病期分布は分離前期:初期:進行期=15:30:14であった.保存治療後の全体の骨癒合率は81.4%,平均治療期間は105日で,病期を「分離前期・初期」と「進行期」に分けると,それぞれ89%,57%(p=0.015)と骨癒合率に有意差を認めた.片側例と両側例では骨癒合率は95%,70%(p=0.045)と片側例で有意に良好であった.

    結語:L4分離症の保存療法における骨癒合率は良好であった.

  • 松谷 重恒, 小澤 浩司, 佐野 徳久, 石塚 正人, 峯岸 英絵, 千葉 晋平, 加藤 慶彦, 国分 正一
    2022 年 13 巻 5 号 p. 752-757
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎変性すべり症の病因は,椎間関節の矢状化が重要な発症因子の一つと考えられている.腰椎変性すべり症について年代間で比較した報告は少なく,本研究では椎間関節および椎間板などの椎間構成要素に年代間での差異があるかを検討した.

    対象と方法:対象は腰椎変性すべり症のため手術を行なった症例とし,50歳代から80歳代まで各年代の4群間で男15例,女15例の各30例ずつを無作為に抽出した.計120症例240椎間関節と120椎間板を比較した.計測は単純X線立位側面像とCTを使用し,検討項目は,椎間関節角,椎間関節角の左右差,男女差,椎間関節の変性度,椎間板の変性度とした.

    結果:高齢になるに従い椎間関節角は小さくなった.各年代を通じて椎間関節の変性は高度だった.壮年層の50歳代と高齢層の80歳代では後者の方が椎間板の変性度が高かった.椎間関節の左右差と男女差について有意差は見られなかった.

    結語:脊椎の加齢性変化は椎間板から始まるとされる.椎間板が変性を起こした結果,脊椎の後方支持組織である椎間関節が椎体を支えきれなくなった時に椎体すべりを生じる可能性が考えられた.

  • 遠藤 義幸, 木曽 匡, 今井 南, 本間 竜海, 大平 洋介, 勝又 稔, 荒引 剛, 若杉 正嗣, 勝見 敬一, 平野 徹
    2022 年 13 巻 5 号 p. 758-762
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:椎弓根に挿入したプローブや椎弓根スクリュー(PS)に電気刺激を行い,Triggered Electromyography(tEMG)を測定した.今回tEMG測定によってスクリューの穿破や神経損傷を回避できたか評価したので報告する.

    対象と方法:2018年1月から2020年4月までにPS挿入時にtEMGを測定した56例(294本)を対象とした.tEMGは刺入したプローブ,もしくはPSに専用刺激電極を取り付け通電し,10 mA以下で近接する神経根に対する筋電図が得られなければ穿破はないと判断した.術後CTを用いてPSの最終設置および入れ替え例における初回挿入経路の位置確認を行った.

    結果:294本中6本(6例)において10 mA以下で該当する神経根領域の筋電図が得られ挿入経路を変更した.これらの症例の術後CTにおいて初回挿入経路の穿破が確認された.

    結語:tEMGで反応があった6症例は椎弓根穿破が認められた.もしそのまま挿入された場合,術後神経障害の可能性が示唆された.tEMGが確認された場合にはPS挿入経路の変更が術後神経障害の予防になり得ることが示唆された.

  • 安藤 圭, 中島 宏彰, 町野 正明, 伊藤 定之, 世木 直喜, 富田 浩之, 小清水 宏之, 大内田 隼, 今釜 史郎
    2022 年 13 巻 5 号 p. 763-769
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:小児ダウン症に対する後頭骨頸椎,上位頸椎後方固定術後の5年間の頸椎アライメント,椎体,椎間板,脊柱管の変化を調査する.

    対象と方法:ダウン症上位頸椎病変に対する後方固定術を施行し,5年以上経過観察が可能であった7例を対象にO-2 angle,C1-2 angle,C2-7angle,各椎体高,椎体前後径,椎体横径,椎間板高,脊柱管前後径,左右径を術前,術後1,2,3,5年時にそれぞれ計測した.

    結果:後頭骨―軸椎4例,環椎―軸椎固定3例に施行された.C2-7椎体高,椎体前後径,C6/7椎間板高は術後有意に増加した一方で,脊柱管前後,横径に各群間で有意差を認めなかった.

    結語:小児ダウン症上位頸椎後方固定術後,固定尾側端である軸椎にも椎体高,椎体前後への成長を認めた.一方で,脊柱管内は成長に伴う変化は少なかった.軸椎にスクリュー刺入しても残存する骨端核より成長が望めること,脊柱管は5歳で成人に近い面積に成長することが明らかとなった.

  • 黄金 勲矢, 高島 弘幸, 寺島 嘉紀, 吉本 三徳, 竹林 庸雄, 山下 敏彦
    2022 年 13 巻 5 号 p. 770-777
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:目的は腰部脊柱管狭窄症における腰痛と関連する因子を解析することである.

    対象と方法:対象は腰部脊柱管狭窄症の患者120例(男性52例,女性68例,平均年齢64.1歳)で腰痛visual analogue scale(VAS)が30 mmより大きいH群,30 mm以下のL群に分類した.神経障害型式,VAS(下肢痛,下肢しびれ),骨密度,すべり,脊柱・骨盤アライメント,椎間板変性,多裂筋断面積と脂肪浸潤,Modic change,椎間関節変性を解析した.

    結果:H群とL群の平均はそれぞれ,下肢痛VASが73.3 mmと50.3 mm,下肢しびれVASが76.2 mmと51.2 mm,腰椎前弯角(lumbar lordosis:LL)が32.6°,40.4°,sagittal vertical axis(SVA)が54.4 mm,29.2 mm,仙骨傾斜が27.7°,32.3°,pelvic incidence(PI)-LLが15.9°,9.6°で有意差を認めた.多重ロジスティック回帰分析でSVA(調整オッズ比:1.017,95%信頼区間:1.003~1.031,p<0.05)とPI-LL(調整オッズ比:1.058,95%信頼区間:1.012~1.152,p<0.05)が有意となった.

    結語:腰部脊柱管狭窄症における腰痛にSVAとPI-LLが有意に関連していた.

  • 寺川 雅基, 安田 宏之, 小西 定彦, 中村 博亮
    2022 年 13 巻 5 号 p. 778-783
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:頚椎椎弓形成術における多剤カクテル注射の術後鎮痛効果と安全性の検討を前向き無作為化比較試験で行った.

    対象と方法:頚椎椎弓形成術を施行した50例を無作為にカクテル群(ロピバカイン18 ml,フルルビプロフェン1.25 ml,0.1%アドレナリン0.1 ml,水溶性プレドニン0.75 ml)25例,対照群(レボブピバカイン0.5%20 ml投与)25例に分けた.創部痛VAS(帰室時,術後3,6,12時間,術後1,2,3,5,6,7日目),帰室後鎮痛剤を使用するまでの時間,24時間以内の鎮痛剤使用回数を比較した.

    結果:創部痛VASは術後1,3,5,6日目においてカクテル群が有意に低かった(p=0.01,0.019,0.024,0.009).24時間以内の鎮痛剤使用回数はカクテル群で有意に使用回数が少なかった(p=0.04).術後合併症は認めなかった.

    結語:多剤カクテル注射はレボブピバカイン単剤の局所浸潤麻酔法と比較し,頚椎椎弓形成術後6日以内の創部痛VAS,24時間以内の鎮痛薬使用量を減少させた.多剤カクテル注射は頚椎椎弓形成術術後疼痛管理の一選択肢になると考える.

  • 奥田 哲教, 岩田 栄一朗, 重松 英樹, 前川 尚宜, 中野 健一, 増田 佳亮, 小西 浩允, 岡田 博, 川崎 佐智子, 福島 英賢, ...
    2022 年 13 巻 5 号 p. 784-790
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:外傷に伴う胸椎腰椎損傷では伸展損傷は稀であり,多くは血管損傷を伴わないが,びまん性特発性骨増殖症(DISH)では伸展損傷からの血管・食道・尿管損傷といった重篤な合併症が報告されている.胸椎腰椎損傷に重篤な合併症を呈する骨折関連リスク因子について検討した.

    対象と方法:手術加療を行った176症例210椎のAO-A3,4,B,Cの胸椎腰椎損傷を対象とした.骨折脊椎周囲組織の脈管や臓器の損傷をsevere complicationと定義し,severe complicationを認めた群をS群,認めなかった群をN群として,2群比較を行った.

    結果:S群14例14椎,N群162例196椎で,分節動脈損傷・胸管損傷・食道損傷・尿管損傷・横隔膜ヘルニア・大動脈プラークのshowering embolisationがsevere complicationであった.S群で有意に高齢,AO分類でBタイプが多く,伸展損傷,DISHが多かった.これらに対して多変量解析を行い,伸展損傷がsevere complicationのリスク因子であった.またS群で術後1ヶ月以内の死亡も有意に多かった.

    結語:胸椎腰椎損傷の伸展損傷はsevere complicationの合併リスクが高く注意を払うべきである.

  • 勢理客 久, 比嘉 勝一郎, 屋良 哲也
    2022 年 13 巻 5 号 p. 791-797
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎椎間板ヘルニアにおける腰痛,下肢痛・しびれに関してヘルニア面積や脊柱管占拠率,肥満が影響するとの報告がある.腰椎椎間板ヘルニア症例の術前臨床症状およびJOABPEQ疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害のスコアとヘルニア面積,脊柱管占拠率,BMIの関連について検討した.

    対象と方法:当院で手術治療を行った腰椎椎間板ヘルニア101例における術前MRIのヘルニア面積,脊柱管占拠率およびBMIと腰痛,下肢痛およびしびれのVAS,JOABPEQの痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害のスコアとの関連についてL4/5高位,L5/S高位別に検討を行った.さらにVASを高度群と軽中等度群,JOABPEQ各項目を高度障害群と軽中等度障害群に分け年齢,男女比,BMI,ヘルニア面積,ヘルニア占拠率について比較を行った.

    結果:ロジスティック回帰分析の結果はL4/5群において女性であることは高度下肢痛の,BMI高値は高度腰痛の,BMI高値は歩行障害の因子であった.

    結語:L4/5高位において性別は下肢痛に,BMIは腰痛や歩行機能障害に関与することが示唆された.

二次出版
  • 峯玉 賢和, 川上 守, 寺口 真年, 籠谷 良平, 米良 好正, 隅谷 政, 中川 雅文, 山本 義男, 松尾 咲愛, 左近 奈菜, 中谷 ...
    2022 年 13 巻 5 号 p. 798-807
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰部脊柱管狭窄症に対する監視下での理学療法(PT)は,非監視下での運動療法よりも短期的には有効であるが,その効果が持続するかについては明らかとなっていない.本研究の目的は,監視下でのPTと非監視下での運動療法の1年後の治療成績を比較することである.

    対象と方法:43例がPT群(週2回6週間),43例がホームエクササイズ(HE)群に無作為に割り付けられた.PT群は,徒手療法,個人に合わせたストレッチと筋力増強,自転車エルゴメーター,体重免荷トレッドミル歩行を実施した.主要評価項目は,チューリッヒ跛行質問票(ZCQ)の重症度とし,1年後の患者立脚型アウトカムと手術移行率を2群で比較した.

    結果:PT群はHE群に比べ,1年後のZCQ重症度と身体機能,日本整形外科学会腰痛質問票の腰椎機能障害,SF-36体の痛みと全体的健康感のMinimum clinically important difference達成率が高く,手術移行率は低かった(P < 0.05).

    結語:監視下での理学療法は,非監視下での運動療法に比べ,1年後でも有効で,手術移行率も低かった.

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