2022 年 13 巻 5 号 p. 733-739
脊椎疾患や骨盤外傷など仙骨を含み固定する際のアンカーとして椎弓根スクリュー(PS)や仙骨翼スクリューが用いられる.これらはその固定力を高めるため仙骨前方の皮質を貫く方法が用いられる事が多い.しかしながら,仙骨前方を貫通したスクリューには神経血管損傷のリスクがあり,我々は前外側へ逸脱したS1 PS先端による術後L5神経根障害の2例を経験した.そこでL5神経根の骨盤内での走行を解剖学的に調査し,仙骨スクリュー挿入の際の安全域を検討した.L5神経根は椎間孔を出た後内側へ向かうものはなく,必ず外側へ向かって走行していた.また,L5神経根は仙骨翼の最前面で角度を変え,さらに外側へ向けて走行する傾向を認めた.側面像でL5神経根は仙骨翼と接して走行しており可動性に乏しいことがわかった.本研究にて,医原性L5神経根損傷を避けるため,S1 PSはS1前仙骨孔より内側へ向けて挿入し,仙骨翼スクリューは30°以上外側へ向けて挿入するべきであることが示唆された.本稿では,我々が経験した症例と解剖学的研究の結果を示し,これまでのL5神経根の解剖に関する知見とともに報告する.