2022 年 13 巻 7 号 p. 992-998
はじめに:今回我々は胸椎化膿性脊椎炎で硬膜外膿瘍による急速な下肢麻痺の悪化をきたした症例,及び肺化膿症・大動脈周囲の炎症へと感染が波及した症例に対して迅速な脊髄の除圧と感染巣の速やかなコントロールを目的に経椎弓根的ドレナージを併用した脊椎固定術を2例経験したので報告する.
症例:症例1は62歳,男性.誘引なく両下肢筋力低下,直腸膀胱障害を自覚.胸椎単純MRIにおいてT7~8レベルで化膿性椎間板炎,硬膜外膿瘍の所見があったため,T6~8は椎弓切除に加え,T8椎弓根からT7/8椎間板腔にドレーンを挿入し,T5,6~10,11と経皮的に後方固定を施行した.徐々に下肢筋力は改善し,術後1年で独歩可能となった.症例2は61歳,女性.T4/5の化膿性椎間板炎により右肺化膿症,大動脈周囲へ炎症波及の所見があり,手術を施行した.片側病巣部は筋層より深部は展開せずにT2,3~6,7に後方固定.非展開側で経皮的にT5椎弓根から4/5椎間板にドレーンを留置した.術後より炎症反応値は徐々に改善し,その後増悪はなく症状も消失した.
結語:今回我々が施行した術式は即時的な脊髄の除圧効果,及び感染巣の速やかなドレナージが可能な術式と考えられた.