2023 年 14 巻 12 号 p. 1433-1438
社会の高齢化により後期高齢者の腰椎圧迫骨折は増加している.圧迫骨折に伴う狭窄により手術を要することがあるが,多くは固定術の報告で除圧術の報告は少ない.我々は後期高齢者の圧迫骨折に伴う腰部脊柱管狭窄症除圧術症例の特徴について調査した.
圧迫骨折を伴った腰部脊柱管狭窄症,腰椎変性すべり症に対し,顕微鏡視下後方除圧術のみを施行した8例(男性2,女性6),平均年齢82歳を対象とした.圧迫骨折はL2 3例,L3 2例,L4 3例,L5 2例,骨密度大腿骨頚部若年成人平均値(YAM)は平均65.4%であった.骨折に伴う最狭窄高位はL2/3 5例,L3/4 2例,L4/5 1例で,可動域は術前平均7.1°から術後4.7°に減少.腰痛治療成績判定基準(旧JOAスコア)は術前平均15.9から術後25.6(改善率76.6%)に改善していた.圧迫骨折高位は分散していたがL2/3,3/4での除圧症例が多く,圧迫骨折のため狭窄高位が上位に多く発生していた.
術後明らかな不安定性の増悪がなく,比較的良好な治療成績が得られていた.低侵襲であり,骨粗鬆症や多くの既往症を抱えることの多い後期高齢者に対して,考慮して良い方法であると考える.