2023 年 14 巻 2 号 p. 82-87
はじめに:Spinal Instability Neoplastic Score(SINS)は転移性脊椎腫瘍の不安定性評価法であるが,骨有害事象リスク患者を検出する際のスクリーニング手段としても使用が報告されている.転移性脊椎腫瘍による脊髄症状発症例から,脊髄症状発症前のSINSを測定することにより,SINSによるリスク患者検出の有効性について検証した.
対象と方法:2004年から2019年,頚胸椎部の転移性脊椎腫瘍に対する手術例81例から,脊髄症状発症前の画像評価が可能であった29例について調査した.脊髄症状発症半年以内に撮影されたCTからSINSを測定し,SINS7以上をリスク患者とした.
結果:CT撮影時期は脊髄症状発症の平均72日前であった.SINSは転移なし2例,7未満(stability)4例,7以上~13未満(indeterminate instability)15例,13以上(instability)8例であり,21%(6/29)はリスク患者とならなかった.
結語:脊髄症状発症前のSINSによる評価では約20%で脊髄症状発症の危険性を検出できない可能性が示唆された.