Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
14 巻, 2 号
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Editorial
総説
原著
  • 宮田 誠彦, 坪内 直也
    2023 年 14 巻 2 号 p. 65-73
    発行日: 2023/02/20
    公開日: 2023/02/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:頚椎症性脊髄症(CSM)において屈曲位K-line(-)の場合,(+)に比べて後方除圧術後の治療成績が低いと報告されている.当院の手術症例を後ろ向きに追跡調査し,屈曲位と中間位の順に(++)のA群と(-+)のB群に分けて後方除圧術の治療効果や画像上の形態変化を比較検討した.

    対象と方法:選択基準をCSM,40歳以上,後方除圧術,術後6ヶ月以上追跡可能な症例とした.臨床成績や,K-lineと前方骨性要素との最小距離(KLBH),局所後弯角,椎間ROM,C2-C7角,MRI所見などを評価できた症例は42例あり,これをA群31例と,B群11例に分けて比較した.

    結果:KLBHはB群で有意に減少しており,術前中間位K-line(+)が術後(-)に転じた症例が2例あった(全てB群).局所後弯角≧10°や椎間ROM≧10°を有する例はB群で有意に多かった.MRI所見や臨床成績は2群間に有意差を認めなかった.

    結語:CSMにおいて後方除圧術後に中間位K-line(+)から(-)に転じるリスク因子として,術前の屈曲位K-line(-),局所後弯角≧10°や椎間ROM≧10°が示唆された.

  • 小野 直登, 石原 昌幸, 川島 康輝, 田中 貴大, 政田 亘平, 朴 正旭, 谷 陽一, 足立 崇, 谷口 愼一郎, 安藤 宗治, 齋藤 ...
    2023 年 14 巻 2 号 p. 74-81
    発行日: 2023/02/20
    公開日: 2023/02/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:近年,側方経路腰椎椎体間固定(以下LLIF)が成人脊柱変形(以下ASD)手術に広く用いられるようになり,冠状面の矯正力が強力であるが故に,腰仙椎fractional curveが残存した場合,Coronal imbalance(以下CI)を来す.今回ASDに対するLLIFと経皮的椎弓根スクリュー(以下PPS)を用いたcircumferential minimally invasive surgery(以下CMIS)における術後CIの対策及びその効果を検討した.

    対象と方法:対象は2018年以降CMISを施行したASD患者105名とした.術中ロッド設置直後のUIV-CSVL≧10 mmのCI群とUIV-CSVL<10 mmのnon CI群に分類し,術前後の脊柱骨盤パラメーター,L4 tilt,C7-CSVLを比較検討した.さらにCI群においては,rod rotation(RR),SAI distraction(SD),kickstand rod technique(KR)を行い,ロッド設置直後及び対策施行後のUIV-CSVLとその変化量,術前後のC7-CSVLを評価した.

    結果:CI群においてnon CI群と比較し術前後のL4 tiltが有意に大きかった.CI群において,各種対策によりUIV-CSVLの改善を認め,対策を追加するとともにUIV-CSVL変化量も増加し,術後C7-CSVLは全ての対策において10 mm以下となった.

    結語:ASDに対するCMISにおける術後CI対策とその効果を検討した.RR,SD,KRを順次行うことで効率のよい術中のCoronal balanceの是正が可能であった.

  • 山本 雅俊, 飯田 圭一郎, 小早川 和, 鍋島 央, 藤原 稔史, 幸 博和, 遠藤 誠, 川口 謙一, 松本 嘉寛, 中島 康晴
    2023 年 14 巻 2 号 p. 82-87
    発行日: 2023/02/20
    公開日: 2023/02/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:Spinal Instability Neoplastic Score(SINS)は転移性脊椎腫瘍の不安定性評価法であるが,骨有害事象リスク患者を検出する際のスクリーニング手段としても使用が報告されている.転移性脊椎腫瘍による脊髄症状発症例から,脊髄症状発症前のSINSを測定することにより,SINSによるリスク患者検出の有効性について検証した.

    対象と方法:2004年から2019年,頚胸椎部の転移性脊椎腫瘍に対する手術例81例から,脊髄症状発症前の画像評価が可能であった29例について調査した.脊髄症状発症半年以内に撮影されたCTからSINSを測定し,SINS7以上をリスク患者とした.

    結果:CT撮影時期は脊髄症状発症の平均72日前であった.SINSは転移なし2例,7未満(stability)4例,7以上~13未満(indeterminate instability)15例,13以上(instability)8例であり,21%(6/29)はリスク患者とならなかった.

    結語:脊髄症状発症前のSINSによる評価では約20%で脊髄症状発症の危険性を検出できない可能性が示唆された.

  • 林 和憲, 田中 亨, 前野 考史, 坂和 明, 榎原 恒之, 田中 秀和, 窪田 穣, 中村 博亮
    2023 年 14 巻 2 号 p. 88-92
    発行日: 2023/02/20
    公開日: 2023/02/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:コロナ禍に関連し,電話外来診療を導入した病院は多い.診療システムの継続性や発展性を考慮すると,ニーズの把握と適応症例の明確化が望まれる.本研究の目的は電話診療継続を希望しなかった患者群の特徴を明らかにすることである.

    対象と方法:電話診療を施行後,主要評価項目として今後の診療希望形態を収集した腰椎変性疾患患者293例を対象とした.質問票を用い,「常に電話診療」「通常の対面診療に電話診療をはさむ」「有事の際に電話診療」「常に対面診療」の4択での回答を依頼した.副次評価項目として患者背景,診療内容,症状の経過を診療記録から収集し,ロジスティック回帰分析を用いて「常に対面診療」を希望した例の特徴を検討した.

    結果:対面診療希望例は29%であった.他の回答例と比較し70歳代が多く(オッズ比:2.30),電話診療期間の腰痛NRSが高く(1.15),日常生活能力がJ1の例が少ない(0.40)ことがわかった.

    結語:腰痛の強い例やADLの低い例では,電話診療の継続を希望しない例が多かった.対面で痛みを医師に直接訴えたい例,触診や処置を希望する例が含まれる可能性が考えられる.

症例報告
  • 谷田 司明
    2023 年 14 巻 2 号 p. 93-100
    発行日: 2023/02/20
    公開日: 2023/02/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:kickstand rod technique(KRT)はLenkeらが発案した,胸椎-腸骨矯正固定の術中・術後に残存するcoronal malalignment(CM)に対する矯正手技である.今回,腰椎変性後側弯症の術中に,通常の矯正操作後になお残存するCMに対して,KRTにて追加矯正した3例を経験したので報告する.

    症例:それぞれ73,68,74歳女性で,術前のC7 plumblineとcenter sacral vertical line(C7PL-CSVL)は65,20,33 mmであった.いずれも前方でlateral interbody fusion(LIF)(L2/3-4/5,L2/3-4/5,L1/2-5/6)を行い,二期的に後方固定(第9胸椎-腸骨)を行った.LIFを施行しなかった下位腰椎-仙椎には後方椎体間固定を行った.通常の矯正操作後の術中X線像でCMの残存を認めたため,KRTで追加矯正した.術後最初の立位X線像でC7PL-CSVLは11,13,18 mmであった.

    結語:術中に残存するCMに対し,KRTによって追加矯正を行なった3例を経験した.KRTは簡便かつ有用な手技である.

  • 齋藤 遼平, 木村 浩明, 三浦 寿一, 和田山 文一郎
    2023 年 14 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2023/02/20
    公開日: 2023/02/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:Bertolotti症候群における肥大した腰椎横突起部分切除(偽関節切除術)を施行するにあたり,ナビゲーションシステムが有効であった2例を報告する.術中CT(Computed tomography)ナビゲーション下に偽関節を切除した後,再度CTを撮像し切除範囲が適切であることを確認して,手術を終了した.

    症例1:15歳女性,2年来の右腰部痛.肥大した右第6腰椎横突起と仙骨に関節を形成していた.ナビゲーション下偽関節切除術を施行し,VAS(Visual Analogue Scale)は90 mmが30 mmに改善した.

    症例2:21歳女性,2年来の左腰部痛.左第5腰椎横突起と仙骨に関節形成を認め,顕微鏡下L5横突起部分切除を施行した.腰痛VAS 80 mmから40 mmに改善したが,腰痛が残存した.局所ブロック注射が著効したため切除不足と判断し,ナビゲーション下に,残存する偽関節横突起を切除したところ,術後4週でVAS 20 mmに改善した.

    結語:肥大した横突起はその特異な形態と視認性不良から切除不足となり得る.適切な偽関節切除にはナビゲーションが有効であった.

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