Journal of Spine Research
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症例報告
転移性髄内腫瘍に対して免疫チェックポイント阻害薬が奏功した1例
藤井 論両角 正義村本 明生松原 祐二
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2024 年 15 巻 4 号 p. 721-725

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抄録

はじめに:転移性髄内腫瘍は予後不良であり,化学療法が有効ではないとされている.今回,転移性髄内腫瘍摘出術後に免疫チェックポイント阻害薬にて経過良好であった1例を経験したので報告する.

症例:74歳,男性.肺癌に対し肺上葉切除術を施行された.再発なく経過していたが術後7ヶ月で尿閉と歩行困難が出現した.造影MRIでC7~Th1高位に内部が均一に造影される硬膜内髄外腫瘍を疑う病変を認め緊急腫瘍摘出術を施行した.術中所見で腫瘍の一部は脊髄に強固に癒着していたため癒着部分は焼灼にとどめた.術直後より対麻痺は改善し杖歩行可能となった.病理組織学的診断は肺癌転移であり,術後MRIにて髄内残存病変を認めたため転移性髄内腫瘍と診断された.腫瘍細胞はPD-L1高発現であったため免疫チェックポイント阻害薬で治療を始め,脊髄浮腫は改善し歩行機能は維持された.

結語:近年PD-L1高発現の肺癌脳転移に対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性が示された.本症例では脊髄浮腫が改善し,良好な神経機能が維持されており,転移性脊髄髄内腫瘍でも免疫チェックポイント阻害薬が有効である可能性が示唆された.

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© 2024 Journal of Spine Research編集委員会
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