Journal of Spine Research
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Print ISSN : 1884-7137
原著
腰椎高位による神経根分岐と椎間板の位置関係に基づく,腰部脊柱管狭窄症除圧術のエンドポイント
中川 智刀髙橋 永次徳永 雅子星川 健兵藤 弘訓佐藤 哲朗
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2024 年 15 巻 8 号 p. 1079-1083

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抄録

腰部脊柱管狭窄症に対する手術療法の基本は除圧術であるが,そのエンドポイントは多くの手技書で不明確である.昨年我々は脊柱管狭窄症の圧迫部位は椎間板レベルであることから椎間板高位での十分な除圧の重要性を報告した.脊柱管狭窄では脊柱管内で馬尾及び神経根が圧迫される.硬膜管内の馬尾は比較的自由に動くことができるため,硬膜管自体の除圧は外側縁までは必ずしも必要でない.これに対して,神経根は可動性が少ないため,神経根外側縁まで十分に除圧することが必要である.一方,硬膜管からの神経根の分岐は,腰椎高位によって異なることが知られている.このため,椎間板高位頭側で神経根がすでに分岐していれば,椎間板高位での除圧はより外側まで必要であり,椎間板の尾側で神経根が分岐するなら,外側縁までは必ずしも必要でないと考えられる.

本研究の目的は,脊髄造影後CTを使用し,腰椎高位別に硬膜管からの神経根分岐と椎間板との位置関係を調べ,除圧術のエンドポイントとの関係性を明らかにすることである.

対象は当院で腰椎椎間板ヘルニア手術に際して脊髄造影を行った50例である.脊髄造影後CTの水平断を使用し,神経根が硬膜管から分岐を始めた時点を分岐部と定義した.L3~S1神経根の分岐を同定し,当該椎間板尾側縁との位置関係を調べた.

結果,神経根分岐が椎間板尾側縁よりも頭側に位置していたのはL3:0%,L4:6%,L5:58%,S1:96%であった.

L3/4より頭側の椎間では,神経根は椎間板より尾側で分岐するため,硬膜管外側縁までは必ずしも必要でない.しかし,L4/5では半分以上,L5/Sではほぼ全例が神経根分岐が椎間板尾側縁よりも頭側にあるため,椎間板高位で神経根外側縁まで十分に除圧する必要がある.

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© 2024 Journal of Spine Research編集委員会
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