抄録
本研究の目的は,Liverpool Care Pathway(LCP)日本語版を導入するための課題を明らかにすることである.LCP日本語版の導入期間中に死亡した患者の診療記録調査と,医師2名と看護師8名を対象としたインタビュー調査を行った.LCP日本語版を使用した患者は22名(38%)であり,使用しなかった患者との死亡前48時間以内の輸液,強オピオイド鎮痛薬と鎮静薬の投与に有意な差はなかった.LCP日本語版を導入して良かったことは,【医療者間で看取りのケアの方針を再確認できた】【看取りのケアを体系的に学べた】であり,導入して難しいと感じたことは,【LCP日本語版の開始の判断が難しかった】【医療者の負担が大きかった】【看取りの基礎知識や経験がないと使えない】であった.一般病棟でLCP日本語版を導入していくためには,看取りのケアの教育と緩和ケアの専門家によるバックアップ体制の構築の必要性が示唆された.