抄録
【目的】本調査の目的は医療者の悪心評価(3段階のVRS)と患者の悪心評価(吐き気日記を用いたNRS)との間の乖離を調査することである.【方法】対象は当院婦人科で入院抗がん剤治療を施行した患者とした.医療者の VRS評価と同時間帯の吐き気日記に記載されたNRS,両者の差を 1件と計測し,過小評価,過大評価,乖離なしに分類した.【結果】対象患者 54名,総数 663件.本調査により,医療者評価と患者評価の乖離は25.2%(過小評価;5.4%,過大評価;19.8%)に認められたが,そのほとんどが医療者による過大評価であり過小評価の割合は少なかった.両者の評価には有意な相関(P<0.001,相関係数r=0.66)がみられ,κ係数は 0.36であった.【考察】医療者が患者の悪心を過小評価しなかった割合は全件数の約95%であり,医療者による VRS評価は実際の悪心の程度を正確に反映していることがわかった.