Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
10 巻, 2 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
原著
  • 山脇 道晴, 森田 達也, 清原 恵美, 清水 恵, 恒藤 暁, 志真 泰夫, 宮下 光令
    2015 年 10 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/08
    ジャーナル フリー
    【目的】ホスピス・緩和ケア病棟で看護師が行ったご遺体へのケアについて,遺族の認識と評価を明らかにすることである.【方法】全国のホスピス・緩和ケア病棟103 施設で死別を体験した遺族を対象とし,2010 年7 月に質問紙を発送し調査を行った.【結果】958 人の遺族に質問紙を発送し,597 人の回答応諾数を得た(回答応諾率62%).ご遺体へのケアに対する遺族の総合的な満足度は76%であった.満足度に関して,多変量解析では,「穏やかな表情にしてくれた」「生前と同じような配慮や扱いをしてくれた」「患者年齢が70 歳以上」の項目が独立した関連要因として同定された.【結論】看護師がご遺体へのケアを行うことは,家族にとって満足が高く,必要性も認識されている.ご遺体へのケアにおける家族が満足する因子として「故人の穏やかな表情」と「故人が生前と同様の配慮や扱いを受ける」ことなどが重要である.
  • 谷本 真理子, 髙橋 良幸, 服部 智子, 田所 良之, 坂本 明子, 須藤 麻衣, 正木 治恵
    2015 年 10 巻 2 号 p. 108-115
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,一般病院における非がん疾患患者に対するエンド・オブ・ライフケア実践を熟練看護師の実践知から明らかにした.7 名の慢性疾患看護専門看護師の実践事例のインタビューから質的統合法(KJ 法)を用いて最終ラベルを抽出した.熟練看護師は,患者の生き方の意思決定を支える関わりと,患者家族の生き方に沿う関わりを,状態悪化の過程にある患者の自尊感情の回復,満足感,納得を指標に定めていた.一般病院では患者の苦痛対応策が不十分であることや,多職種とのケアの合意や他施設とのケア継続は困難を伴うが,熟練看護師は患者の意向を日々捉えながら,家族や地域ケア体制に患者の意向を浸透させる調整を行っていた.治療の場でのエンド・オブ・ライフケア実践では,家族,医療者も共に了解しながら患者を支え続けることができる支持的環境,診断初期より関わる医療者の意識向上と患者の意思決定を支える支援技術の向上が必要である.
  • 佐藤 一樹, 橋本 孝太郎, 内海 純子, 出水 明, 藤本 肇, 森井 正智, 長沢 譲, 宮下 光令, 鈴木 雅夫
    2015 年 10 巻 2 号 p. 116-123
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/17
    ジャーナル フリー
    【目的】在宅緩和ケアを受けた終末期がん患者の在宅診療中止の関連要因を明らかにする.【方法】年間看取り数20名以上の在宅療養支援診療所6施設から在宅緩和ケアを受けた終末期がん患者352名の診療録調査を行い,自宅死亡/在宅診療中止の関連要因を分析した.【結果】自宅死亡が289名(82%),在宅診療中止が63名(18%)であった.多変量解析の結果,患者や家族の看取り場所の希望が自宅以外(オッズ比〈OR〉=10[95%信頼区間2.5~41],52[12~227]),不明・明確な希望なし(OR=5.0[1.3~19],11[2.3~51]),家族に不安・抑うつがある(OR=4.1[1.2~14]),主介護者の介護頻度が少ない(OR=6.8[2.0~23]),在宅診療中の入院歴あり(OR=12[4.0~34])が,在宅診療中止に関連した.【結論】在宅緩和ケアを受けた終末期がん患者の在宅診療中止の関連要因が明らかとなった.
  • 近藤 さえ子, 伊藤 礼子, 伊藤 まさ江
    2015 年 10 巻 2 号 p. 124-129
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/18
    ジャーナル フリー
    リンパ浮腫の保存的治療は,スキンケア・用手的リンパドレナージ・圧迫・圧迫下での運動・日常生活指導を総合した複合的治療である.このうち圧迫は,多層包帯法と弾性着衣による中圧(30 mmHg)以上での圧迫治療が一般的である.しかし,合併症やADL,治療コンプライアンス不足から一般的な圧迫治療が困難な患者も多い.本研究では,通常の圧迫治療が困難なISL(International Society of Lymphology)分類Ⅱ期の15例に対し,装着しやすい筒状包帯とウェーブスポンジ併用による,弱圧の圧迫を行い,効果を検討した.治療前後の周径比較では,平均周径値が有意に減少し,治療前後の患肢容姿の点数評価でも有意に改善がみられた.患者のADL・QOLの向上がみられ,思考・行動に前向きな変化を生じた.弱圧での簡易的圧迫でも,ISLⅡ期の患者に対する治療効果が認められた.一般的な圧迫療法が困難な患者では,ウェーブスポンジ併用弱圧での圧迫治療が治療選択肢となると考えられた.
  • 金石 圭祐, 川畑  正博, 森田 達也
    2015 年 10 巻 2 号 p. 130-134
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/17
    ジャーナル フリー
    終末期がん患者における不眠は頻度の高い苦痛症状の1つである.患者だけでなく,家族や介護者にとっても負担は大きい.薬物療法は主要な対応の1つであるが,多くの終末期がん患者にとって薬剤の内服は困難となる.今回われわれは不眠に対しフルニトラゼパムの単回皮下投与の有効性を示すことを目的とした観察研究を行った.睡眠の評価にはSt. Mary’s Hospital Sleep Questionnaire を使用した.主要評価項目は睡眠の質とした.30人の患者が対象となった.良好な睡眠の質が得られた患者の割合は90%であった.平均睡眠時間は7.5時間で,入眠までの平均時間は31分であった.投与後2人がせん妄と診断された.平均呼吸回数の減少がみられたが,臨床的な問題はなかった.終末期がん患者における不眠に対し,フルニトラゼパムの単回皮下投与が有効に使用できる可能性が示された.
  • 榊原 直喜, 東 尚弘, 山下 慈, 三浦 浩紀, 吉本 鉄介, 吉田 茂昭, 早坂 佳子, 小松 浩子, 的場 元弘
    2015 年 10 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/22
    ジャーナル フリー
    【背景】高齢がん患者の疼痛の実態は十分に明らかとなっていないことが多い.ケアの質向上のためにも,こうした実態を含めた課題の把握が必要である.【目的】がん患者の疼痛と対処状況の特徴,および,課題を把握する.【方法】都道府県がん診療連携拠点病院である青森県立中央病院の全がん患者で同意が得られた者を対象に疼痛の状況やQOL,治療歴等を収集し,入院/外来,および,高齢者(≧65歳)/非高齢者(<65歳)を比較した.【結果】回答率は57.0%であり,入院より外来で疼痛患者のうち除痛不十分な頻度は高く(除痛率:外来28.9% vs入院:52.6%,NRS:外来3.9 vs入院2.1,P<0.001),外来で特に高齢者の除痛率が低かった(高齢者: 24.7% vs非高齢者: 35.8%,P<0.01).【結論】一般に外来での疼痛の評価・介入の工夫が必要であると考えられるが,特に高齢者への介入の優先度が高いことがうかがえた.
  • 山本 泰大, 築山 郁人, 犬塚 涼子, 藪下 廣光, 若槻 明彦, 松浦 克彦
    2015 年 10 巻 2 号 p. 142-148
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    【目的】本調査の目的は医療者の悪心評価(3段階のVRS)と患者の悪心評価(吐き気日記を用いたNRS)との間の乖離を調査することである.【方法】対象は当院婦人科で入院抗がん剤治療を施行した患者とした.医療者の VRS評価と同時間帯の吐き気日記に記載されたNRS,両者の差を 1件と計測し,過小評価,過大評価,乖離なしに分類した.【結果】対象患者 54名,総数 663件.本調査により,医療者評価と患者評価の乖離は25.2%(過小評価;5.4%,過大評価;19.8%)に認められたが,そのほとんどが医療者による過大評価であり過小評価の割合は少なかった.両者の評価には有意な相関(P<0.001,相関係数r=0.66)がみられ,κ係数は 0.36であった.【考察】医療者が患者の悪心を過小評価しなかった割合は全件数の約95%であり,医療者による VRS評価は実際の悪心の程度を正確に反映していることがわかった.
  • 川名 真理子, 橋沢 幸佑, 永井 淳子, 舟越 亮寛, 千葉 恵子, 蔵本 浩一, 関根 龍一, 佐々木 忠徳
    2015 年 10 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    【背景】当院は急性期病院であり,入院患者に実施したアンケート調査で院内の疼痛管理が不十分な症例があることが明らかとされた.【目的】オピオイドによる疼痛管理や副作用対策について PCTからの推奨提案を行うオピオイド回診の有用性を評価する.【方法】疼痛管理目的で強オピオイドが処方された PCT未介入の全入院患者を対象とした.毎週行うオピオイド回診では,PCT薬剤師が事前に,薬物療法の視点から疼痛管理や副作用対策の適切性を確認した記録をもとに PCTが推奨提案を行った.その受理や症状改善のモニターを行った.【結果】調査期間の 3年間での総介入件数(延べ)は 4,978件であり,そのうち,888件(17.8%)に改善のための推奨提案を行った.PCTからの推奨提案が受理された症例の症状改善率は82.3%であった.【結語】オピオイド回診は,オピオイドの適正使用や疼痛緩和に対して有用であることが示唆された.
短報
  • 三浦 篤史, 篠原 佳祐, 山本 亮, 大塚 菜美, 宮田 佳典, 崎山 隼人
    2015 年 10 巻 2 号 p. 301-304
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    舌がんでは,腫瘍増大による嚥下機能低下から流涎を招き,Quality of Life を低下させることがある.一般的に流涎の対応として,水分摂取量の減量,抗コリン薬の投与などが行われるが,充分に流涎を抑制できない場合がある.今回,ブチルスコポラミン臭化物の持続静注では流涎の改善が認められなかった舌がん患者に対して,院内製剤であるスコポラミン軟膏を耳介後部の乳様突起付近に貼付したところ流涎の緩和が認められた.有害事象としては口渇を認めたが,問題になるほどではなかった.また,局所の皮膚炎を生じることなく使用できた.スコポラミン軟膏は持続注射よりも簡便であり,舌がん患者の流涎対策の一つになり得る可能性が示唆された.
症例報告
  • 下山 恵美, 松岡 鐘文
    2015 年 10 巻 2 号 p. 501-504
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/03
    ジャーナル フリー
    【緒言】セロトニン症候群はセロトニン性神経伝達を亢進させる複数の薬剤の相乗作用で惹起されることが多い.フェンタニルとアモキサピンを併用投与し,本症候群を発症した症例を経験した.【症例】37歳女性,子宮頸がんの再発による臀部痛に対し,オキシコドン徐放錠とエトドラクを投与していたが,胃穿孔のため緊急開腹術を施行した.術中よりフェンタニル持続投与を開始し,術後も継続した.翌日よりフェンタニルパッチに変更したが,その後臀部痛が増強したため,フェンタニルを増量するも除痛は不十分であり,アモキサピンを追加した.5日後さらにフェンタニルを増量したところ,翌日より,四肢の振戦,混乱・せん妄,幻覚が出現し,引き続き,発熱,下肢不随意運動が出現した.アモキサピンを中止したところ4日後には解熱し,症状が軽快した.【結論】本症例は高用量のフェンタニルと三環系抗うつ薬の併用によりセロトニン症候群を発症したと考えられた.
  • 齋藤 美也子, 間宮 敬子, 笹田 豊枝, 中西 京子, 阿部 泰之, 岩崎 寛
    2015 年 10 巻 2 号 p. 505-508
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/07
    ジャーナル フリー
    【緒言】小脳悪性黒色腫の延髄播種病変に起因する難治性吃逆に対して,呉茱萸湯が奏効した症例を経験した.【症例】症例は54 歳の男性.小脳悪性黒色腫の延髄播種病変に対し化学療法を行い経過観察していたところ,徐々に増大した延髄病巣が原因と考えられる持続性難治性の吃逆を発症した.吃逆に対して一般的に使用されている中枢性筋弛緩薬のバクロフェンや制吐薬のメトクロプラミド,抗精神病薬のクロルプロマジン,抗てんかん薬のクロナゼパムなどの西洋薬を試みたが効果は認められなかった.そこで,漢方薬の中でも吃逆の第1 選択薬とされることが多い芍薬甘草湯を試みたが改善せず,呉茱萸湯に転方した.呉茱萸湯投与2 日目に吃逆は消失し,随伴する頭痛も改善した.患者は,約1 年後になる現在も呉茱萸湯を内服中で,吃逆の再発はない.【結論】西洋薬が無効,あるいは十分な効果が得られない病態に対して,漢方薬の使用は有用な選択肢の1 つである.
  • 大西 佳子, 細川 豊史, 坪倉 卓司, 深澤 圭太, 上野 博司, 権 哲, 原田 秋穂, 深澤 まどか, 山代 亜紀子, 谷口 彩乃, ...
    2015 年 10 巻 2 号 p. 509-513
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    転移性脳腫瘍による頭痛は,腫瘍による脳血管の偏位や頭蓋内圧亢進に基づく硬膜の緊張,痛覚神経が存在する頭蓋内部位の牽引などで生じる.また,腫瘍の髄腔内播種やがん性髄膜炎による髄膜刺激症状などによっても生じる.頭蓋内圧亢進による頭痛の治療は,通常,高浸透圧輸液とステロイドの投与により脳浮腫の軽減と頭蓋内圧を下げることで行うが,内圧が下がらず頭痛治療に難渋することも少なくない.今回,頭蓋内圧亢進に基づく頭痛に対し,高浸透圧輸液とステロイド投与が奏功せず,オピオイドの増量が奏功した2 症例を経験した.痛覚神経への浸潤に対してはオピオイドが有効であるが,頭蓋内圧亢進による頭痛に対してオピオイドが有効であるという報告は過去にない.高浸透圧輸液やステロイドで頭蓋内圧が下がらず頭痛のコントロールが不十分な際は,NSAIDs やオピオイドの投与あるいは増量で対処を試みることは臨床的に十分価値があると考える.
  • 平本 秀二, 菊地 綾子, 吉岡 亮, 大津 裕佳, 小東 靖史, 後藤 容子, 堤 ゆり江, 平岡 眞寛, 小野 公二
    2015 年 10 巻 2 号 p. 514-517
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    進行胃がんの出血や通過障害に対する緩和的治療には,外科的治療,内視鏡的治療があり,多くの報告があるが,緩和的放射線治療の報告は少ない.2006年4月~2014年3月の間に当院で非切除進行胃がんの患者の症状緩和目的に放射線治療を施行した11例について検討した.治療目的は止血8例,狭窄解除4例であった.止血奏効率は63%,狭窄解除奏効率は50%であった.止血奏効期間中央値,狭窄解除奏効期間中央値はそれぞれ103日,52日であった.全生存期間中央値567日で,照射開始後生存期間中央値は105日であった.症状緩和目的の放射線治療は,外科的治療や内視鏡的治療より効果発現までに時間を要するため,症例を選べば一定の効果が期待でき,低侵襲であるため,よい選択肢となる治療である.
  • 本間 英之, 堀 正樹, 高橋 芳右
    2015 年 10 巻 2 号 p. 518-522
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/17
    ジャーナル フリー
    認知症を合併したがん患者の苦痛評価は,困難な場合がある.われわれは,認知症合併進行皮膚がん患者の脳梗塞が診断されないまま転院を繰り返した1例を経験した.患者は85歳,女性.2009年頃より認知障害を認めていた.2013年頃より左頬部皮膚腫瘍の増大を認め,2014年6月に皮膚腫瘍,嚥下困難のため近医に入院した.進行皮膚がん,認知症の診断で他院に転院したが,症状はすべて皮膚がんと認知症によるものと診断された.発症日+36日に当院に転院し,頭部CTおよびMRI検査で亜急性期脳梗塞と診断された.本例では,認知症と進行がんが,家族と医療者による脳梗塞症状の認識を阻害したと推察され,詳細な問診が検査実施の契機になった.脳梗塞の診断は,身体症状の緩和に無効だったが,家族の病状に対する理解や予後を実感したケアへの参加など,受容や心理的な充足感に有効と推察された.
  • 小石 恭士, 飯田 温美, 塚原 悦子
    2015 年 10 巻 2 号 p. 523-526
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/08
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍に伴い血液凝固亢進をきたし血栓・塞栓症を生じる病態は,Trousseau症候群として知られる.進行再発直腸がんのため緩和ケア病棟入院中に脳梗塞を発症し,抗凝固療法を行った1例を報告する.症例は50歳,女性.直腸がん術後で肺転移と多発骨転移あり.疼痛増強にて在宅療養が困難となり,緩和ケア病棟へ入院となった.薬物治療と放射線照射により疼痛は緩和され退院となるが,肺転移巣の進行にて再入院,療養していたところ,部分的視野欠損,失語症が相次いで出現した.MRIにて多発脳梗塞を認め,血液検査ではDIC(播種性血管内凝固症候群)を伴っていたためTrousseau症候群と診断した.ヘパリンによる抗凝固療法を開始したところ,失語症の改善がみられた.治療に伴う有害事象はなかった.終末期という理由だけで一律に本症への抗凝固療法の適応なしと判断せず,予後や全身状態以外に治療が患者にもたらす意義や安全性などを個々の症例で検討する必要がある.
  • 李 美於, 新城 拓也
    2015 年 10 巻 2 号 p. 527-530
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/17
    ジャーナル フリー
    本邦では,フェンタニル舌下錠,フェンタニルバッカル錠が,がん疼痛の突出痛に対して投与可能となった.しかし,どのような病態の患者,またどのような突出痛にフェンタニル粘膜吸収剤を投与するか,具体的な報告は少ない.フェンタニル粘膜吸収剤の投与を推奨できない症例を提示する.77歳,男性,直腸がんの胸椎転移に対して,フェンタニル貼付剤 12.5μg/時を投与中,突出痛には,化学療法による悪心,嘔吐があったため,フェンタニル舌下錠 100μgを投与した.強い突出痛に対して,フェンタニル舌下錠を初めて使用したところ,6時間意識障害をきたした.重篤な呼吸状態の悪化がなかったため,経過観察した.回復後の後遺症はなかった.定時投与するオピオイドが経口モルヒネ換算 30 mg(オキシコドン 20mg,フェンタニル貼付剤 12.5μg/時)の患者に対しては,フェンタニル舌下錠 100μgを投与しない方がよい.
  • 坂本 雅樹, 林 祐一, 今藤 裕之, 高山 悟, 可児 久典, 大橋 純子
    2015 年 10 巻 2 号 p. 531-534
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/22
    ジャーナル フリー
    消化器がん患者では黄疸による皮膚掻痒感を訴える例が多く,さまざまな治療・ケアが提供されるが,症状緩和に難渋することも多い.進行がんによる黄疸が原因の皮膚掻痒症に対して,牛車腎気丸が有効と考えられた 2例を経験した.【症例1】68歳男性,胆管細胞がん.閉塞性黄疸による掻痒感が持続し,内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(endoscopic nasobiliarydrainage; ENBD)にて減黄しても掻痒感は軽減せず,種々の対症療法も無効であった.牛車腎気丸 7.5g分 3を投与開始し,睡眠が改善した.【症例 2】81歳男性,C型肝硬変,肝細胞がん.黄疸の進行により皮膚掻痒感が出現し,種々の治療は無効であった.牛車腎気丸を 5.0 g分 2で開始し,掻痒感 NRSが 10→3に減少した.黄疸による皮膚掻痒感に牛車腎気丸が有効であり,同様の症例に対して試してみてよい治療法と考えられた.
  • 齋藤 美也子, 間宮 敬子, 笹田 豊枝, 中西 京子, 阿部 泰之, 岩崎 寛
    2015 年 10 巻 2 号 p. E1-E5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/18
    ジャーナル フリー
    p.505 著書所属
     誤:2) 旭川医科大学 教育センター
     正:2) 旭川医科大学 教育センター(現 信州大学附属病院 信州がんセンター 緩和部門)


    p.508 著者所属
     誤:2) Education Center, Asahikawa Medical University
     正:2) Education Center, Asahikawa Medical University(currently Division of Palliative
          Medicine, Shinshu University Hospital Shinshu Cancer Center)
活動報告
  • 渡邊 裕之, 江藤 美和子, 山﨑 圭一
    2015 年 10 巻 2 号 p. 901-905
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    2011年に,ベルランド総合病院緩和ケアチーム(以下,PCT)で構築したPCT 情報共有データベース(以下,DB)の有用性を報告した.今回は,PCT のニーズに応じてDB の改良を行った.おもに以下の5 点についてDB の改良を行った.1)各PCT メンバーが患者介入時の記録を自由記載するフォームを設けた.2)問題点ごとに提案内容を入力するフォームの改良を行った.3)患者情報データシート上にSTAS-J の評価を時系列に表示できるようにした.4)Palliative Prognostic Index の計算フォームを追加した.5)日本緩和医療学会に提出する緩和ケアチーム登録に必要なデータを簡便に抽出できるようにした.このDB は市販のDB 作成ソフトで構築されており,どの施設でも利用可能であることが有用な点であると思われる.
  • 瀧田 敬子, 熊谷 務, 山根 綾香, 衣笠 久美子, 廣山 恵, 山根 享, 大石 正博
    2015 年 10 巻 2 号 p. 906-910
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/17
    ジャーナル フリー
    本研究は鳥取市立病院緩和ケアチーム(以下,PCT)の臨床活動の結果を自己評価したオーディット研究である.PCTの医師・看護師・薬剤師・がん相談員は,病棟看護師・病棟薬剤師と,入院患者の疼痛治療を評価し,提案を行うオピオイド回診(以下,回診)を週1回行った.PCT介入例を除き,がん性疼痛緩和目的でモルヒネ,オキシコドンまたはフェンタニルを使用する入院患者を対象とした.提案は,WHO方式がん疼痛治療法に基づき,主治医には回診結果を伝えた.2009年9月の開始から4年経過し,回診継続により主治医の疼痛マネジメントに改善がみられたか分析した.PCTが1年間に行ったオピオイド回診総件数中に提案を行った件数の割合を比較すると,1年目16.7%,2年目12.6%,3年目8.1%,4年目7.5%と減少した.回診は,主治医に対する疼痛管理の適正化を目的とする活動として,一定の教育効果をもたらした可能性が示唆された.
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