抄録
本邦では,フェンタニル舌下錠,フェンタニルバッカル錠が,がん疼痛の突出痛に対して投与可能となった.しかし,どのような病態の患者,またどのような突出痛にフェンタニル粘膜吸収剤を投与するか,具体的な報告は少ない.フェンタニル粘膜吸収剤の投与を推奨できない症例を提示する.77歳,男性,直腸がんの胸椎転移に対して,フェンタニル貼付剤 12.5μg/時を投与中,突出痛には,化学療法による悪心,嘔吐があったため,フェンタニル舌下錠 100μgを投与した.強い突出痛に対して,フェンタニル舌下錠を初めて使用したところ,6時間意識障害をきたした.重篤な呼吸状態の悪化がなかったため,経過観察した.回復後の後遺症はなかった.定時投与するオピオイドが経口モルヒネ換算 30 mg(オキシコドン 20mg,フェンタニル貼付剤 12.5μg/時)の患者に対しては,フェンタニル舌下錠 100μgを投与しない方がよい.