抄録
【緒言】当院緩和ケア病棟入院中,メサドン投与中の患者が発作性心房細動(Paf)を発症したが,抗不整脈薬アプリンジン経口投与にて除細動に成功し,メサドン投与の継続が可能であった症例を経験したので報告する.【事例】75歳男性,甲状腺癌切除後,多発骨転移による難治性がん疼痛を来した.オキシコドン投与からメサドン投与に切り替えを行い,メサドン40 mg/日投与にて痛みは軽減し,QT延長はない.メサドン投与約9カ月後,ある朝突然に食欲不振となり,心電図検査にてPaf発症と判明.除細動目的でアプリンジン20 mgを経口投与し,約2時間後洞調律となり,以降再発なし.【考察】本症例は,メサドン投与中に,Pafを偶発的に合併したと考えられた.メサドン投与中の患者に抗不整脈薬を使用する場合,薬物相互作用の結果QT延長をもたらすことが危惧される.QT延長をもたらすことの少ない薬剤を慎重に選択することが重要であった.