Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
11 巻, 1 号
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原著
  • 内藤(白土) 明美, 森田 達也, 山内 敏宏, 横道 直佑, 小田切 拓也, 今井 堅吾, 井上 聡
    2016 年11 巻1 号 p. 101-108
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/21
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    Advance Care Planning(以下ACP)は進行がん患者のquality of lifeを大きく規定する要因として重要である.本研究はACPに関する日本人の進行がん患者の意向を探索するため,ホスピス入院中の患者10名を対象とした半構造化面接によるインタビュー調査を行った.9名はACPの意義があると答えたが,1名は意義がないと答えた.望ましい話し合いの時期は患者により意見が異なり,治療中から,転移が判明した時,ホスピス入院時,主治医が適切と判断した時などであった.望ましい話し合いの相手はほとんどの患者が主治医と答えた.ACPにおける家族の役割や文書化の意義は患者により大きく意見が異なり,賛否が分かれた.患者にACPの希望があるかを早い時期から確認し,希望する場合には話し合いが必要な時期を主治医が判断するとともに,家族の役割について個別に確認することが必要であることが示唆された.
  • 村上 真基, 大石 恵子, 荒井 進, 島田 宗洋
    2016 年11 巻1 号 p. 109-115
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/03
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    【目的】療養病棟でがん患者の緩和ケアを行った成績を検討した.【方法】2010年4月~2014年12月に当院医療療養病棟へ入院した194名について,医療用麻薬(麻薬)不使用期(2012年3月まで:前期)と麻薬使用期(2012年4月以降:後期)の2群に分け,患者背景,入院期間,転帰,麻薬投与,苦痛緩和等について後方視調査した.比較のため緩和ケア病棟(PCU)の入院動態を調査した.【結果】前期74名中がん患者は16名(22%),後期120名中がん患者は79名(66%)と後期でがん患者の割合が3倍に増えた(p<0.01).後期の入院期間は1/2(144日)に短縮(p<0.01),死亡退院率(78%)は増えた(p<0.05).後期はがん患者の半数以上(57%)に麻薬を投与し,疼痛緩和は良好であった.後期の期間はPCU入院患者も増加した.【結語】療養病棟はPCUと連携してがん緩和ケアを行える可能性が示唆された.
  • 今中 啓一郎, 吉村 大志, 冨永 裕慎, 古賀 裕海, 廣瀬 敬一郎
    2016 年11 巻1 号 p. 116-122
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/18
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    以前,中等度から高度のがん疼痛に対し,オピオイド鎮痛薬が定時投与されている被験者を対象に,タペンタドール徐放錠(ER)に切り替え8週間経口投与した時の有効性,安全性を検討,報告した.既報では,安全性についてすべての有害事象を集計の対象としたが,本報告では,オピオイドに特徴的な有害事象について本剤との因果関係が否定できない事象(副作用)を集計の対象とし,発現率及び発現時期を,参照薬であるモルヒネ徐放性製剤(SR)と比較検討した.タペンタドールER及びモルヒネSRは各50例であり,主な副作用は,便秘(8.0%,20.0%),悪心(8.0%,14.0%),嘔吐(2.0%,24.0%),傾眠(8.0%,18.0%)で,いずれもモルヒネSRよりタペンタドールERで頻度が低かった.タペンタドールERは安全性プロファイルが良好な経口オピオイド剤として,がん疼痛の新たな治療選択肢になると考えられた.
  • 矢吹 律子, 久永 貴之, 木内 大佑, 下川 美穂, 阿部 克哉, 大塚 貴博, 櫻井 亜矢子, 須田 さと子, 志真 泰夫
    2016 年11 巻1 号 p. 123-127
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/29
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    がん終末期の症状緩和において持続皮下投与は有用であるが,クロルプロマジン・レボメプロマジンの皮膚刺激性が問題になることがある.2010年4月から2013年3月までに,当院緩和ケア病棟において向精神薬(クロルプロマジン・レボメプロマジン・ミダゾラム)を持続皮下投与した全患者について,CTCAE v4.0 Gr.3以上の皮膚有害事象を生じた頻度を調べた.上記3剤のいずれかを持続皮下投与したのは389/603例(64.5%)であった.Gr.3(潰瘍または壊死)以上の皮膚有害事象を生じた頻度(95%信頼区間)は,クロルプロマジン4/345例:1.2(0.0-2.3)%・レボメプロマジン2/90例:2.2(−0.8-5.2)%・ミダゾラム0/210例:0.0(0.0-0.0)%であった.向精神薬の持続皮下投与における重篤な皮膚有害事象の発生頻度は低く,皮膚への安全性は許容できる範囲と考えられる.
短報
  • 垂見 明子, 三松 早記, 森田 達也, 内藤 明美, 坂本 康成, 奥坂 拓志, 清水 千佳子
    2016 年11 巻1 号 p. 301-305
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/07
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    終末期についての話し合いは患者家族のquality of lifeを規定する重要な要因である.本研究はがん治療医を対象とした質問紙調査の自由記述の質的分析から,終末期の話し合いにおける課題に関するがん治療医の意見を収集した.質問紙は864名に送付し490名から回答を得た.自由記述から合計420意味単位を分析対象とした.がん治療医が終末期の話し合いを行う際の問題として(1)患者家族の課題(【患者家族の個別性に対応することの難しさ】【病状理解の難しさ】)(2)医療者に起因する課題(【患者家族・医療者双方への精神的サポートの不足】【医療者間の考え方の相違】など)(3)システムと体制に関する問題(【時間・人的リソースの不足】【教育・研究の不足】など)が抽出された.本研究の知見は,今後緩和ケア医とがん治療医が共同してがん患者との終末期の話し合いを行う際の相互理解に役立つと考えられる.
  • 福永 智栄, 上川 竜生, 仙田 正博, 石川 慎一
    2016 年11 巻1 号 p. 306-310
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/15
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    【目的】タペンタドールの臨床使用経験から,鎮痛効果や適応などがん疼痛におけるオピオイドとしての臨床意義を検討する.【方法】当院でタペンタドールを使用した31例の患者を後ろ向き調査で行った.【結果】成功例は19例で,NRSは有意な低下を認め,開始量は73.7±25.6 mg,モルヒネ換算30 mg以下で,完了時は125±49.3 mgであった.導入前に消化器症状がみられた8例中6例で症状の改善がみられた.また成功例と不成功例の比較から,体性痛と神経障害性疼痛が混在した痛みではタイトレーションが難しいことが示唆された.【結論】当院での使用経験からタペンタドールは,非オピオイドもしくは低用量オピオイドからの導入において使用しやすい薬剤と考える.
  • 渡邉 千春, 栗和田 直樹, 細貝 智恵子, 石岡 幸恵
    2016 年11 巻1 号 p. 311-315
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/29
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    【目的】医療型療養病床での看取りにおける看護師・介護福祉士の役割を明らかにする.【方法】医療型療養病床に勤務し,看取りの経験がある看護師4名・介護福祉士5名の計9名を対象とし,半構造化面接法を用い内容分析を行った.【結果】看取りにおける看護師の役割として,〔家族が看取りのプロセスに十分関われたと感じられるように支援する〕等6つのカテゴリーが抽出された.また,介護福祉士の役割として〔介護福祉士としての活動を通して看護師を支援する〕等5つのカテゴリーが抽出された.【結論】より良い看取りを行っていくために,介護福祉士が行うケア・関わりの効果・意義と安全を保証する,介護福祉士の主体性を高めるような機会の提供を看護師・介護福祉士それぞれが意識して取り組む,が挙げられた.
  • 坂下 美彦, 藤川 文子, 秋月 晶子, 藤里 正視
    2016 年11 巻1 号 p. 316-320
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/04
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    【緒言】SEIQoL-DWは半構造化面接により患者が大切に思う5つの領域に焦点をあてて個人のQOLを測定する方法である.本研究は進行がん患者の大切に思う領域と主観的QOLの変化について病状悪化の経過の中で縦断的に評価するのを目的とした.【方法】痛みがSTAS1以下などを適格基準としSEIQoL-DW を1年間に緩和ケア外来(1回目)と入院後(2回目)に実施した症例を対象とした.【結果】対象は5例(男1,女4,年齢67.6歳)であった.1回目面接時P.S.は全例1に対し,2回目面接時には3ないし4であった.面接の間隔は平均164日.全例において大切な領域の内容は5つのうち3つ以上が変化した.全般的主観的QOLを意味するSEIQoL-indexは3例で上昇し2例で低下した.【結論】終末期に患者が大切に思う領域は大きく変化する.個人の主観的QOLは全身状態の低下とは必ずしも一致しない.
  • 浦浜 憲永, 藤川 晃成, 薗 潤, 吉永 和正
    2016 年11 巻1 号 p. 321-325
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/25
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    【緒言】終末期悪性腫瘍患者の予後予測において,最も頻用されているツールの1つにPalliative Prognostic Score (PaP) がある.PaPの対象疾患は,腎がんを除く悪性固形腫瘍で,血液悪性疾患は除外されている.【目的】終末期血液悪性疾患に対してPaPを用いて予後予測することが,妥当で有用であることを明らかにする.【方法】当院ホスピス病棟に入院した終末期血液悪性疾患患者18例に対して,PaPを用いて予後を予測し,予測精度を先行研究と比較する.【結果】21日生存予測の感度は91.7%,特異度は83.3%,陽性的中率は91.7%,陰性的中率は83.3%,正診率は88.9%,30日生存予測の感度は72.7%,特異度は85.7%,陽性的中率は88.9%,陰性的中率は66.7%,正診率は77.8%で,良好な予測精度であった.【結語】終末期血液悪性疾患患者に対してもPaPを適応できる可能性がある.
総説
  • 大河原 啓文, 深堀 浩樹, 廣岡 佳代, 宮下 光令
    2016 年11 巻1 号 p. 401-412
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/03
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    わが国で高齢者ケア施設は新たな看取りの場として期待されている.本研究の目的は,文献検討により日本の高齢者ケア施設における看取りの質の評価・改善に関する研究の動向を明らかにすることである.文献検索の結果抽出された23文献を介入研究4件,介入のための教育・質改善ツール開発3件,調査研究13件,質的研究3件に分類した.高齢者ケア施設でのケアの質に関する研究は微増傾向にあるが介入研究は少なかった.看取りの実施要因として施設長・看護管理者の方針や,医療機関との連携,家族の明確な意思決定などがあった.職員の抱える課題や教育ニーズ,介護職へのサポートの必要性が示されていた.以上より高齢者ケア施設での看取りに関する介入研究,施設長・看護管理者への支援,入居者・家族の意思決定支援や,職員対象の教育プログラムの開発などが高齢者ケア施設における看取りの質改善に有用と考えられた.
症例報告
  • 松田 良信, 吉川 善人, 岡山 幸子, 日吉 理恵, 遠野 かおり, 橋本 百世, 野間 秀樹, 大西 衛, 板倉 崇泰, 木村 祥子, ...
    2016 年11 巻1 号 p. 501-505
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/14
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    【緒言】当院緩和ケア病棟入院中,メサドン投与中の患者が発作性心房細動(Paf)を発症したが,抗不整脈薬アプリンジン経口投与にて除細動に成功し,メサドン投与の継続が可能であった症例を経験したので報告する.【事例】75歳男性,甲状腺癌切除後,多発骨転移による難治性がん疼痛を来した.オキシコドン投与からメサドン投与に切り替えを行い,メサドン40 mg/日投与にて痛みは軽減し,QT延長はない.メサドン投与約9カ月後,ある朝突然に食欲不振となり,心電図検査にてPaf発症と判明.除細動目的でアプリンジン20 mgを経口投与し,約2時間後洞調律となり,以降再発なし.【考察】本症例は,メサドン投与中に,Pafを偶発的に合併したと考えられた.メサドン投与中の患者に抗不整脈薬を使用する場合,薬物相互作用の結果QT延長をもたらすことが危惧される.QT延長をもたらすことの少ない薬剤を慎重に選択することが重要であった.
  • 橋本 孝太郎, 田中 宗雄, 菅野 秀, 矢野 順子, 岩渕 良枝, 須田 たくみ, 池田 恵子, 田中 嘉章, 田中 純一, 鈴木 雅夫
    2016 年11 巻1 号 p. 506-509
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/15
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    【目的】在宅療養中の終末期がん患者における致死的出血事例を調査すること.【対象・方法】2007年10月~2014年12月末までに当院で在宅緩和ケアを提供し死亡したがん患者のうち,致死的出血が契機で死亡の転帰をたどった7例(1.4%)の後方視的診療録調査を実施.【結果】男性4名,平均年齢70±11歳,原疾患は様々であった.いずれも出血発症時は医療者が立ち会えず,6例は自宅死亡,1例は止血目的に入院したが入院中に死亡した.6例は,致死的出血より24時間以上前に,同部位の出血エピソードがあった.医療者が止血を試みたもの,止血剤を投与したもの,鎮静薬を投与したものはそれぞれ1例ずつであった.自宅死亡の6例は事前に在宅看取りの意向を確認していた.【考察】在宅療養中の終末期がん患者において,致死的出血を起こした場合にできることは限られており,事前に出血時の対応について話し合っておくことの重要性が示唆された.
活動報告
  • 河端 秀明, 西川 正典, 猪田 浩理, 田中 章夫, 柿原 直樹, 多賀 千明, 小東 睦, 中村 光男, 長谷川 知早, 神田 英一郎, ...
    2016 年11 巻1 号 p. 901-905
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/27
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    当院では歯科医師が緩和ケアチーム(PCT)の一員として活動を共にしている.2009年から2014年までに当院PCTが介入したがん患者127例のうち,17例(13.3%)に口腔内の症状を認め,PCTで治療方針を検討した.口腔内の痛み,口腔乾燥,味覚異常,舌苔付着,唾液過多,食思不振,および開口障害に対し専門的治療を行い,全例に口腔内所見の改善が得られ,16例(94%)に症状の改善を認めた.歯科医師のPCT加入は介入患者の症状緩和に有効であり,チーム員の口腔に対する意識も向上した.またPCTによる口腔内観察は,患者のQOLの改善に寄与するだけでなく,医療スタッフの口腔への関心を高める効果も期待される.さらに多診療科連携を深めることにより,より質の高い緩和ケアを提供できるものと考える.
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