Advance Care Planning(以下ACP)は進行がん患者のquality of lifeを大きく規定する要因として重要である.本研究はACPに関する日本人の進行がん患者の意向を探索するため,ホスピス入院中の患者10名を対象とした半構造化面接によるインタビュー調査を行った.9名はACPの意義があると答えたが,1名は意義がないと答えた.望ましい話し合いの時期は患者により意見が異なり,治療中から,転移が判明した時,ホスピス入院時,主治医が適切と判断した時などであった.望ましい話し合いの相手はほとんどの患者が主治医と答えた.ACPにおける家族の役割や文書化の意義は患者により大きく意見が異なり,賛否が分かれた.患者にACPの希望があるかを早い時期から確認し,希望する場合には話し合いが必要な時期を主治医が判断するとともに,家族の役割について個別に確認することが必要であることが示唆された.
終末期についての話し合いは患者家族のquality of lifeを規定する重要な要因である.本研究はがん治療医を対象とした質問紙調査の自由記述の質的分析から,終末期の話し合いにおける課題に関するがん治療医の意見を収集した.質問紙は864名に送付し490名から回答を得た.自由記述から合計420意味単位を分析対象とした.がん治療医が終末期の話し合いを行う際の問題として(1)患者家族の課題(【患者家族の個別性に対応することの難しさ】【病状理解の難しさ】)(2)医療者に起因する課題(【患者家族・医療者双方への精神的サポートの不足】【医療者間の考え方の相違】など)(3)システムと体制に関する問題(【時間・人的リソースの不足】【教育・研究の不足】など)が抽出された.本研究の知見は,今後緩和ケア医とがん治療医が共同してがん患者との終末期の話し合いを行う際の相互理解に役立つと考えられる.