2019 年 14 巻 3 号 p. 203-207
タペンタドールは,トラマドールをもとにセロトニン再取り込み阻害作用を軽減して創られた薬であるものの,若干のセロトニン再取り込み阻害作用を有している.今回,われわれは,選択的セロトニン再取り込み阻害薬が投与されている49歳女性の食道がん患者にタペンタドールを開始したところ,内服当日より,静坐不能となり,悪心,めまい,不眠が出現し,さらに翌日には,発熱,発汗,上肢を中心とするミオクローヌス,四肢の振戦,頻脈を認めた症例を経験した.3つの診断基準に照らし合わせて,セロトニン症候群と診断した.タペンタドールの中止とベンゾジアゼピン系薬の開始にて,速やかに症状は消失した.本邦において,タペンタドールは,がん疼痛治療に用いられているオピオイド鎮痛薬であるが,抗うつ薬と併用する際には,セロトニン症候群を念頭に入れた観察を行うことが必要である.