2019 年 14 巻 3 号 p. 215-219
【背景】癌性心膜炎に伴う心囊水貯留はドレナージを要することが多いが,心囊穿刺は心囊水が少量の場合は危険を伴い,繰り返し行うことは困難である.【症例】71歳男性.2012年に非小細胞肺がんと診断.術後再発をきたし化学療法を繰り返した.癌性心膜炎を合併し2018年6月に心囊ドレナージを施行した.化学療法を再開したが2018年8月に再度心囊水の貯留をきたし,呼吸困難が増悪した.頻回の排液を要すると予想され,心囊内に皮下埋込型ポートを留置した.それ以後,心囊水を適宜排液して呼吸困難に対処した.次第に心囊水を排液しても循環動態が保てなくなり,術後36日で死亡に至った.【考察】癌性心膜炎の心囊穿刺を繰り返すのは困難であり,心囊ドレーンを皮下埋込型ポートとして留置し,適宜排液すれば安全に呼吸困難の緩和が続けられ,患者のQuality of Life(QOL)維持に有用と思われる.症例数を蓄積してさらなる検討が望まれる.