2024 年 19 巻 1 号 p. 53-57
【緒言】がん終末期において,低血糖による意識障害を来した症例を報告する.【症例】73歳男性.2016年,開頭腫瘍摘出術を施行され,孤立性線維性腫瘍と診断.2022年,脳腫瘍再発し当院ホスピスに入院.転院120日目,突然意識障害が出現.低血糖を認め,ブドウ糖静注により意識障害は改善した.諸検査の結果,膵外腫瘍による低血糖症(non-islet cell tumor hypoglycemia: NICTH)が強く疑われた.【考察】NICTHはインスリン様物質(大分子量insulin-like growth factor (IGF-)II)が腫瘍から過剰分泌されることが原因と考えられている.低血糖は徐々に進行することから,前駆症状なく意識障害が出現することがある.意識混濁,せん妄などがあり,巨大腫瘍を有する症例では,NICTHによる意識障害も鑑別診断に入れる必要がある.