Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
19 巻, 1 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
原著
  • 舘脇 怜奈, 升川 研人, 青山 真帆, 五十嵐 尚子, 森田 達也, 木澤 義之, 恒藤 暁, 志真 泰夫, 宮下 光令
    2024 年 19 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/29
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    電子付録

    遺族調査のアウトカムに対するさまざまな患者背景,遺族背景の寄与度を明らかにすることを目的とし,2014年,2016年,2018年に実施された全国遺族調査のデータの二次解析を行った.ケアの構造・プロセスの評価(CES),望ましい死の達成度(GDI),複雑性悲嘆(BGQ),抑うつ(PHQ-9)で評価した.大規模なデータで網羅的な遺族調査のアウトカムへの分析を行ったことで,今後の分析に際して交絡変数の調整の必要性やどの変数で調整すべきかが明らかになった.全体としてCES(Adj-R2=0.014)や全般満足度(Adj-R2=0.055)に今回検討した背景要因の寄与度は低かった.GDI(Adj-R2=0.105)に関しては相対的にやや高く,PHQ-9(Max-rescaled R2=0.200)やBGQ(Max-rescaled R2=0.207)に関しては無視できない程度と考えられた.

  • 小田切 拓也, 森田 達也, 伊藤 浩明, 山田 祐司, 馬場 美華, 成本 勝広, 辻村 恭江, 石原 辰彦
    2024 年 19 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/29
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    【目的】緩和ケア病棟から在宅退院後の体験を明らかにするため,緩和ケア病棟退院患者の在宅でのQOLを緩和ケア病棟死亡患者と比較した.【方法】2010年1月~2014年8月に日本の12の緩和ケア病棟から在宅退院し再入院せず死亡したがん患者の遺族(以下,Home群)に,自記式アンケートを送付した.比較として,同時期に同じ緩和ケア病棟で死亡した患者のQOLを示したJ-HOPE3遺族データ(以下,PCU群)を使用した.【結果】495人に送付(回答率47.3%)しHome群188人と,PCU群759人を解析した.Good Death Inventoryで,Home群は,望んだ所で過ごせた,楽しみがあった,家族と過ごせた,大切にされたの高値と,PCU群は痛みや体の苦痛が少なく過ごせたの高値と関連した.【結論】緩和ケア病棟から在宅退院した患者の環境のQOLは良好だったが,症状緩和は緩和ケア病棟の評価が高かった.

短報
  • 小林 孝一郎, 村上 真由美
    2024 年 19 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/09
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    【目的】日本の病院では死亡した患者に対して,退院までの間に医療スタッフが哀悼の意を表する慣習がみられる.全国での見送りの実態を知る予備調査として,死亡確認から退院までの流れを調査した.【方法】全国の病院に勤務する医療者を対象に,インターネットを利用した質問紙調査を実施した.【結果】アクセス数345, 有効回答数101.夜間・休日の看取りは87%が当直・当番医だった.搬送業者のお迎えは77%が病室まで来ていた.葬送儀礼を行っていたのは13%であった.退院経路は正面玄関8%,裏玄関82%,救急出入口5%,ご遺体専用出口5%であった.葬送儀礼を行うことに肯定的な意見が23%,否定的な意見が19%あった.【考察】見送りのときに葬送儀礼を行っている病院は13%と少数だった.

  • 石井 瞬, 福島 卓矢, 神津 玲, 宮田 倫明, 中野 治郎
    2024 年 19 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/26
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    電子付録

    【目的】本研究の目的は,全国がん診療連携拠点病院におけるがん患者の骨粗鬆症診療の実態を把握することである.【方法】WEBアンケートを用いた調査研究であり,泌尿器科,婦人科,血液内科,呼吸器内科,呼吸器外科,消化器内科,消化器外科の医師を対象に,各診療科のがん患者に対する骨粗鬆症の評価や治療の有無について調査した.【結果】婦人科,血液内科,乳腺外科,泌尿器科における,がん患者に対する骨密度測定や骨粗鬆症治療薬処方は実施率が高かった.その実施の選定基準としては,年齢,ホルモン療法,ステロイドの使用が多く挙げられた.【結論】診療科によって,がん患者に対する骨粗鬆症診療の実施や,実施の選定基準に違いが認められたため,骨粗鬆症に対する評価や治療の啓蒙が今後の課題であると考える.

  • 萩原 綾希子, 牧野 綾, 原田 紘子, 小田 浩之, 松山 茂子, 小松 智子, 佐藤 有美, 神山 秀一, 岡見 英里香, 合田 由紀子
    2024 年 19 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/26
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    【目的】脳腫瘍や髄膜がん腫症による頭痛および/または悪心に対するミダゾラム持続投与の有用性と安全性を検討する.【方法】2005年4月から2021年3月までの間に頭痛および/または悪心を緩和する目的でミダゾラムの持続投与を行った患者をカルテから後方視的に検討した.【結果】22例中19例が頭痛,14例が悪心/嘔吐の症状を有していた.ミダゾラムの奏効率は頭痛に対して17例(89%),悪心/嘔吐に対して11例(78%)であった.ミダゾラム開始後24時間以内の嘔吐の平均回数は0.14±0.36回で,開始前24時間の平均回数である1.43±1.6回と比較して有意に低下した(P=0.015).傾眠を5例に認めた.全例において呼吸抑制を認めなかった.【結論】脳腫瘍や髄膜がん腫症による頭痛および/または悪心に従来の治療が無効である場合,ミダゾラム持続投与は症状を改善させる治療方法である可能性がある.

  • 駒澤 伸泰, 横平 政直
    2024 年 19 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
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    【目的】わが国では医学生を対象とした緩和ケアに関する意識調査は少ない.本調査では医学生を対象に緩和ケアに関する学修準備性を検討することを目的とした.【方法】本研究の施行は香川大学医学部研究倫理委員会の承認を得た.診療参加型臨床実習開始直前の本学医学部医学科生105名を対象とした.令和4年度版医学教育モデル・コア・カリキュラムにおける「緩和ケア」の九つの学修目標に対する自信に関して0–100点(0点:全く自信がない–100点:十分に自信がある)で回答してもらった.9項目の統計比較はクラスカル・ウォリス検定の後にシェッフェの多重比較を行い,P<0.05を有意とした.【結果】回答率は62.9%(66/105名)であった.学修目標に関する自信は,項目6[死の概念の理解]が他の5項目に比して有意に高かった(P<0.05).他の項目間に有意差はなかった.【結論】診療参加型臨床実習を迎える医学生に緩和ケアに関する系統的準備教育を行う必要性が示唆された.

症例報告
  • 鈴木 優太郎, 大野 茂樹, 石川 ゆりか, 金島 正幸, 佐藤 哲観
    2024 年 19 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/16
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    終末期がん患者の呼吸困難に対する高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)はガイドラインなどで言及されているが,その適応はいまだに確立していない.今回われわれは,緩和ケア病棟入院中にHFNCを導入することで,呼吸困難が増悪する中でも,会話や食事といった日常生活動作の楽しみを維持し,それぞれの患者が「その人らしく」終末期を過ごすことができた3症例を経験した.緩和ケア病棟におけるHFNCは,効果と侵襲性とのバランスを慎重に検討したうえで実施すれば,呼吸困難の緩和による患者のQOL維持向上に寄与すると考えられた.

  • 山田 健介, 中尾 光宏, 吉川 功一, 貞廣 浩和, 苅田 雅子, 眞鍋 裕気, 田中 秀和, 佐藤 智充, 水田 英司
    2024 年 19 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
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    【緒言】膵がんの再発形式は局所再発や腹膜播種が多く,強い腹痛や背部痛の原因となる.今回,膵がん術後の頭蓋骨転移により頭痛をきたし,放射線治療が有効だった症例を経験した.【症例】67歳女性.膵がん術後,局所再発と腹膜播種による心窩部痛に対し,ロキソプロフェンとフェンタニル貼付剤でコントロールが得られていた.右頭痛が出現し徐々に増強したが頭蓋内圧亢進症状や巣症状に乏しく,一次性頭痛が疑われた.頭痛に対するアセトアミノフェンや五苓散の効果は乏しかった.CTでは脳転移や骨転移を認めなかったが,MRIで右前頭骨に転移を認めた.同部位に対し緩和的放射線治療を施行した.頭痛はNumerical Rating Scaleで7–8/10から2–3/10に軽減した.【結論】がん患者の頭蓋骨転移がCTでは診断できず,MRIで診断できることがある.

  • 長谷川 拓也, 田橋 賢久, 坂本 憲広, 新地 啓子, 徳永 有理, 田村 信司, 伊藤 則幸
    2024 年 19 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/09
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    【緒言】がん終末期において,低血糖による意識障害を来した症例を報告する.【症例】73歳男性.2016年,開頭腫瘍摘出術を施行され,孤立性線維性腫瘍と診断.2022年,脳腫瘍再発し当院ホスピスに入院.転院120日目,突然意識障害が出現.低血糖を認め,ブドウ糖静注により意識障害は改善した.諸検査の結果,膵外腫瘍による低血糖症(non-islet cell tumor hypoglycemia: NICTH)が強く疑われた.【考察】NICTHはインスリン様物質(大分子量insulin-like growth factor (IGF-)II)が腫瘍から過剰分泌されることが原因と考えられている.低血糖は徐々に進行することから,前駆症状なく意識障害が出現することがある.意識混濁,せん妄などがあり,巨大腫瘍を有する症例では,NICTHによる意識障害も鑑別診断に入れる必要がある.

  • 宮本 達人, 富山 敏直, 渡部 祐子, 橋本 龍也
    2024 年 19 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/04
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    オピオイドの全身投与でまれにかゆみを生じることを経験するが,その機序は明確にわかっていない.今回,強オピオイドの剤型変更で難治性のかゆみを生じ,オピオイドスイッチングで早期に消失した症例を経験したので報告する.症例は80歳,女性.膵がん再発による背部痛の増悪や,腹痛が出現した.ヒドロモルフォン徐放製剤10 mg/日投与も痛みの緩和が不十分であり,調節性を考慮しヒドロモルフォン注射製剤3 mg/日に変更した.翌日痛みが軽減したが,全身にかゆみが出現した.抗ヒスタミン薬の内服薬や外用薬を投与したが効果不十分であった.ヒドロモルフォン注射製剤は同量投与であったがかゆみが増悪傾向であり,フェンタニル貼付剤0.6 mg/日にスイッチングを行った.翌日にはかゆみが激減し,2日後にはかゆみがほぼ消失した.ヒドロモルフォンの投与中にかゆみが生じた場合,フェンタニル貼付剤へのスイッチングが有効である可能性がある.

活動報告
  • 大澤 岳史, 春田 淳志, 松浦 みゆき, 上野 晶香, 田 直子
    2024 年 19 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/22
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    【目的】地域一般病院の緩和ケア外来で療養支援した患者の経過を検討した.【方法】当院緩和ケア外来を受診しその後死亡した患者を後ろ向きに調査した.外来は週2回,がん治療状況に依らず診療した.【結果】対象93例中,病状悪化時の療養希望は72例に聴取し,療養から看取りまで緩和ケア病棟を希望(緩和ケア病棟希望)が25例,訪問診療を受けつつ自宅療養を行い最期は緩和ケア病棟での看取りを希望(訪問診療→緩和ケア病棟希望)が25例,療養から看取りまで自宅を希望(訪問診療希望)が17例だった.緩和ケア病棟希望患者の96%が緩和ケア病棟を利用し,84%が緩和ケア病棟で看取り,訪問診療→緩和ケア病棟希望患者の76%が訪問診療を利用し,80%が緩和ケア病棟で看取り,訪問診療希望患者の76%が自宅療養し,47%が自宅で看取られた.【結論】緩和ケア外来の療養支援にて希望場所での療養・看取りの実現可能性が示唆された.

  • 武藤 直美, 伊藤 智子, 尾関 美代子, 河合 奈津子, 湯浅 典博
    2024 年 19 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/07
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    【目的】日本ホスピス緩和ケア協会による緩和ケア病棟自施設評価共有プログラムを用いた,ケアの質の評価や変化を明らかにする.【方法】7部門(ニーズの把握とアセスメント,ケア計画,ケアの実施,退院準備と支援,臨死期への対応,遺族ケア,病床運営と地域のニーズへの対応),47項目について,2018年度,2021年度,2022年度の3回,自施設評価を行い,改善目標を決定した.各年度の5段階評価の平均スコアの推移,改善目標との関連について検討した.【結果】2018年度から2022年度にかけて,ニーズの把握とアセスメント,臨死期への対応,遺族ケアについてスコアの上昇を認めた.【結論】自施設評価共有プログラムを継続してケアの質の評価を行うことは,緩和ケア病棟の現状を分析し,改善点を明らかにしてケアの質を向上させる可能性がある.

  • 藤村 敦子, 河鰭 憲幸
    2024 年 19 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/28
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    近年,非がん疾患に対する緩和ケアの重要性が強調されているが,非がん患者に対する緩和ケアチームの介入は少ない.そこで,本研究では当院(大阪府堺市にある678床の大阪労災病院)の緩和ケアチームの介入を集計し活動内容を明らかにすることとした.当院で2019年4月から2023年3月までに緩和ケアチームに依頼があった非がん患者のカルテを調査し,緩和ケアチーム介入件数(総件数,非がん件数),介入期間,患者の性別,年齢,依頼内容,介入後の結果,提案の受け入れ状況,および多職種カンファレンス参加と検討内容を集計した.対象患者は64名で,依頼を出した診療科は循環器内科が42名と最多だった.依頼症状は呼吸困難,疼痛,倦怠感の順に多かった.多職種カンファレンスの参加依頼は22名,検討内容は鎮静が9件で最多だった.本研究より,チームの周知活動,主治医の参加,非がん疾患の勉強会開催が依頼増加の要因と推測された.

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