2024 年 19 巻 2 号 p. 137-147
【目的】本研究の目的は日本の終末期がん患者の心肺蘇生をしないことに関する話し合い(Do-Not-Resuscitate discussions: DNRd)の現状と,DNRdの有無による遺族の心理的負担を明らかにすることである.【方法】日本の23の緩和ケア病棟(PCU)に入院した進行がん患者を対象に多施設前向き観察研究を行い,患者が死亡退院後,その遺族への質問紙調査も行った.【結果】患者(n=1,605)と医師間でDNRdが行われていたのは,PCU入院前71.4%,入院時10.8%,入院中11.4%だった.一方,家族とはPCU入院前93.3%,入院時48.4%,入院中52.1%だった.【結論】PCU入院前から死亡までの経過を通じていずれかの時期では72.3%の患者と医師の間でDNRdが行われていたが,DNRdへの患者参加による遺族の抑うつや複雑性悲嘆といった心理的負担は認めなかった.