【緒言】悪性関節液による疼痛に対して関節液穿刺と放射線照射が有効であった肺がんの1例を経験した.【症例】80歳男性.右肩痛で右手の挙上が困難となったため,当院を紹介された.全身CTで右肺腫瘍,多発肝転移,多発骨転移を認めた.また,右肩甲骨にも転移を認め,右肩関節に液体が貯留していた.右肩甲骨の転移に対して放射線照射を行ったが,疼痛は悪化していないものの残存していた.そのため,右肩関節の関節液穿刺を行ったところ,疼痛は軽減した.また,関節液細胞診でnon-small cell carcinomaの診断となった.右肺腫瘍からも生検を行い,組織診断は関節液と同様であったため,化学療法を開始した.治療開始後のCTでは右肩関節液が減少し,右肩甲骨転移の進行もみられなかった.【結論】骨転移に伴う悪性関節液を認めた場合,厳しい予後が予測されるが,関節液穿刺や放射線照射によって疼痛の軽減が期待できる.