Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
19 巻, 4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • 石川 彩夏, 石木 寛人, 松原 奈穂, 池上 貴子, 川崎 成章, 荒川 さやか, 池長 奈美, 飯田 郁実, 近藤 麗子, 里見 絵理子
    2024 年19 巻4 号 p. 237-243
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/10
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    【緒言】オピオイド投与中の重篤な過量症状に対し,ナロキソン投与を検討する.しかしがん疼痛治療中のナロキソン投与の実態は明らかでない.【目的】オピオイド過量症状に対しナロキソンを投与された患者の頻度とその関連要因を探索する.【方法】後方視的研究.2014–2022年に当院のオピオイド投与中のがん患者からナロキソン使用例を抽出し,手術や検査・処置後を除外した.使用オピオイドの種類,投与経路,用量とナロキソン投与方法,用量,投与後反応を調べた.【結果】18例(0.10%)が抽出され,ナロキソン投与時のオピオイドは経口モルヒネ換算81.6(21–750)mg/日で,患者状況(重複あり)は,腎機能低下8例,臨床的予後予測週単位7例,オピオイド変更/増量後4/3例だった.【考察】ナロキソン投与症例は腎機能低下や終末期,オピオイド変更/増量後が多く,過量症状出現に注意が必要なリスク因子の可能性がある.

  • 岡本 実保, 坂口 美和, 辻川 真弓, 角甲 純
    2024 年19 巻4 号 p. 269-278
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/10
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    【目的】本研究の目的は,外来通院で化学療法を受けている進行がん患者の自己有用感の様相を明らかにすることである.【方法】20名の患者を対象に,人の役に立つことへの思い,生活状況,役割の変化などについて半構造化面接を実施し質的内容分析を行った.【結果】分析の結果,最終的に自己有用感の様相として5つのテーマ,〔他者への貢献〕〔自他からの承認〕〔存在することに与えられた価値〕〔自立の保持〕〔人生の統合〕が生成された.【結論】外来通院で化学療法を受けている進行がん患者の自己有用感は複雑な様相を呈しており,これは患者が病気の増悪や進行に対峙する中で,自立が脅かされたり,残された時間や死を意識することによるものと示唆された.

  • 松本 智里, 牧野 智恵
    2024 年19 巻4 号 p. 299-305
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/26
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    コロナ禍でがんサロンの活動休止を経験したがん体験者9名にがんサロンに抱いた要望を面接調査した結果,【自分らしく安心して過ごしたり,情報交換できる場がほしい】【専門知識をもった医療従事者がいてほしい】【ほかのがん体験者と直接会って,経験を身近に感じたい】【リモートではお互いの気持ちを共感したり,伝えあうのが難しく,不全感が残るので工夫がほしい】【自分のがん体験を活かせる場がほしい】の5つのカテゴリーが抽出された.対面での交流が難しい社会情勢であっても,がん体験者はがんサロンでの交流を,情報収集や雑談のためだけでなく,生きがいと感じて,続けていきたいと望んでいたことがわかった.がんサロンの主催側は参加者が自由に交流し,共感し合えるように,感染対策やリモート開催等の工夫をして,がんサロンを休止せずに継続できる工夫をすることが重要であることが示唆された.

  • 太田 有咲, 青木 美和, 山本 瀬奈, 高尾 鮎美, 田村 沙織, 木澤 義之, 荒尾 晴惠
    2024 年19 巻4 号 p. 307-316
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    【目的】本研究の目的は,緩和ケアの専門家が不在の施設に所属する医師が抱くがん患者への緩和ケア提供上の困難を明らかにすることである.【方法】A県内にある日本緩和医療学会認定医,専門医等の緩和ケアの専門家が不在の施設に所属するがん医療に携わる医師11名を対象に半構成的面接を実施し,内容分析を行った.【結果】対象者は,がん患者の症状に対する迅速な対応を求められるが,周辺に相談可能な施設がなく《地域連携における困難》があるなか,専門家や自施設の医療者に相談できず《緩和ケアに係る相談における困難》を抱いていた.また,がん患者が持つ複雑性の高い症状への《症状緩和における困難》を経験していた.背景には,多忙さなどの《医師個人の緩和ケア提供の基盤における困難》があった.【結論】迅速な症状緩和が必要な場合や複雑性の高い症状へ対応するために,専門家の継続的な外部コンサルテーション体制構築の必要性が示唆された.

短報
  • 松田 芳美, 古瀬 みどり
    2024 年19 巻4 号 p. 257-262
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/30
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    【目的】がん治療後の高齢乳がんサバイバーが,がん患者会を長期生存期の支援としてどのように認識しているかを明らかにする.【方法】がん治療後高齢乳がんサバイバー6名に,患者会から得られたと感じる支援や患者会への思いを半構造的面接法で尋ねた.【結果】がん治療後の高齢乳がんサバイバーは患者会に対して,[患者会はがん治療後の悩みを共有できがんとの共生に役立つ][患者会継続で遭遇する仲間の再発転移や死を自分と重ね思案する][長期にわたり患者会へ参加する中で自身の状況が変化し継続困難と感じる]と認識していることが明らかになった.【考察】がん治療後の高齢乳がんサバイバーにとって患者会は重要な資源であり,長期生存期の支援では,継続参加できる患者会のあり方の検討と,地域医療福祉機関と連携できる体制の必要性が示唆された.

  • 阿部 健太郎, 赤木 徹, 石木 寛人, 三浦 智史, 荒川 歩, 小川 千登世, 橋本 浩伸
    2024 年19 巻4 号 p. 263-268
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/06
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    【目的】終末期小児がん患者のオピオイド使用量の経時的変化を調査し,年齢や疾患の影響を明らかにする.【方法】2014年1月から2022年10月までに,国立がん研究センター中央病院において亡くなった小児がん患者を対象とし,診療録を用いて死亡7日前,3日前,1日前の体重あたりの経口モルヒネ換算一日量(OMEDD/kg)を年齢別(14歳以上群,14歳未満群)と疾患別(造血器悪性腫瘍群,固形腫瘍群)に後方視的に調査した.【結果】対象は36名.14歳未満群は14歳以上群よりも死亡7日前,3日前および1日前よりOMEDD/kgが多い傾向がみられた.造血器悪性腫瘍群は,死亡7日前,3日前では固形腫瘍群よりもOMEDD/kgが少なく,1日前では同等の傾向がみられた.【結論】終末期小児がん患者のオピオイドの使用量は,年齢や疾患において異なるため,個々の患者の因子について十分に配慮する必要があることが示唆された.

  • 佐藤 麻美子, 田上 恵太, 田上 佑輔, 青山 真帆, 井上 彰
    2024 年19 巻4 号 p. 279-284
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/12
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    電子付録

    本研究は緩和ケアの専門家が不在の地域における継続的な緩和ケアアウトリーチの訪問看護師への影響を検討した.われわれは宮城県登米市で,2018年7月から緩和ケアアウトリーチ活動を行っており,訪問看護師への影響を検討するため,活動開始時と2年後の緩和ケアに対する困難感,自信・意欲,活動の有用性について自記式質問紙調査を行った.対象は登米市の訪問看護師とした(回答者数:活動開始時39名,2年後24名).困難感尺度,自信・意欲尺度の変化は統計学的有意差を認めなかった.活動が有用であると評価した割合は66.7%であった.自由記述の内容分析から,終末期ケアに対する視野が広がり,自信が向上したことが示唆された.緩和ケアアウトリーチは訪問看護師の困難感軽減,自信の向上に有用な可能性があるが,地域全体に影響するには中長期的な活動が必要と考えられた.

症例報告
  • 白石 朝子, 井手 飛香, 鍋島 直美, 橋本 玲亜, 木村 恵, 藤井 有沙, 近藤 貴子, 安髙 久美子, 塚田 順一
    2024 年19 巻4 号 p. 245-249
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/28
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    小腸ストーマ患者のオピオイドの薬物動態およびオピオイドスイッチングに関する報告は少ない.今回われわれは,小腸ストーマを有する40歳の男性に対し,トラマドール速放製剤の1日4回内服から24時間徐放製剤の内服へ切り替えを行ったところ鎮痛時間の短縮と疼痛の増強を認めた例を経験した.健常成人では1日4回内服と24時間徐放製剤の内服では血中濃度の差に変化はないとされているが,本症例では徐放製剤が有効に機能するための小腸通過時間の確保や吸収能力が不十分であった可能性が示唆された.小腸ストーマ造設患者ではより細やかな投薬調整が必要であると考えられた.

  • 眞水 飛翔, 熊谷 守洋, 桑名 知花, 宮加谷 昌紀, 眞水 麻以子, 石川 大輔, 河上 英則, 古川 俊貴, 石田 卓士
    2024 年19 巻4 号 p. 251-255
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/29
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    【緒言】悪性関節液による疼痛に対して関節液穿刺と放射線照射が有効であった肺がんの1例を経験した.【症例】80歳男性.右肩痛で右手の挙上が困難となったため,当院を紹介された.全身CTで右肺腫瘍,多発肝転移,多発骨転移を認めた.また,右肩甲骨にも転移を認め,右肩関節に液体が貯留していた.右肩甲骨の転移に対して放射線照射を行ったが,疼痛は悪化していないものの残存していた.そのため,右肩関節の関節液穿刺を行ったところ,疼痛は軽減した.また,関節液細胞診でnon-small cell carcinomaの診断となった.右肺腫瘍からも生検を行い,組織診断は関節液と同様であったため,化学療法を開始した.治療開始後のCTでは右肩関節液が減少し,右肩甲骨転移の進行もみられなかった.【結論】骨転移に伴う悪性関節液を認めた場合,厳しい予後が予測されるが,関節液穿刺や放射線照射によって疼痛の軽減が期待できる.

  • 島田 宣弘, 五十嵐 孝, 稲見 薫, 黒崎 史朗, 清水 敦, 丹波 嘉一郎
    2024 年19 巻4 号 p. 293-297
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/20
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    症例は60歳の女性.子宮頚がんのがん性疼痛に対し投与されたオキシコドン徐放錠が,がんの治癒後にも放射線腸炎に伴う腹痛や,腸穿孔術後の腸閉塞,便秘症による腹痛に対して継続投与されていた.強い眠気があり,オキシコドン徐放錠をモルヒネ散に切り替えて緩徐に減量した.減量により眠気,便秘,腹痛は改善したが,倦怠感,発汗,焦燥感が出現した.これらはモルヒネ散の内服で改善し,オピオイド鎮痛薬の退薬症候と診断した.4年かけてさらに緩徐に減量を試みたが,モルヒネ散を中止すると退薬症候が出現するため,現在も少量のモルヒネ散を継続している.オピオイド鎮痛薬の不適切使用は厳に慎むべきであるが,オピオイド鎮痛薬の中止までに専門医の注意深い観察のもとでの長期継続を要する場合がある.

活動報告
  • 札場 博貴, 佐藤 千鶴, 林 知玻也, 青柳 瑞穂, 安倍 加代, 籾井 泰朋, 川﨑 ゆかり, 麻生 大吾, 松下 航, 髙尾 薫平, ...
    2024 年19 巻4 号 p. 285-291
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/16
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    【背景】脳腫瘍患者は進行性の意識障害を伴い,自身による意思決定の時期を逸することが多い.【方法】急性期脳神経外科病棟において,脳腫瘍患者の意思決定支援に向けた多職種カンファレンスを行い,さらに脳腫瘍に特化したadvance care planning(ACP)啓発リーフレットを作成,運用した.運用前後の入院患者79名について,ACPの五つのステップの到達率やプロセスを繰り返した回数を評価した.【結果】リーフレットによる意思決定支援を行った患者は48名,行わなかった患者は31名であった.大切にしたいことの考察や意思決定代理人の選定はいずれの群も概ね達成した.ACPにおける話し合い(38.7% vs 89.6%, p<0.001)や書き留め(6.5% vs 33.3%, p=0.006)の達成率は,リーフレット導入後に有意に向上した.【結語】新たに作成した脳腫瘍特化型ACPリーフレットは,脳腫瘍患者のACPを推進し,意思決定支援に有用であった.

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