周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第21回
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シンポジウム午後の部
新生児重症度スコアを用いた新生児集中治療の評価
大木 康史懸川 聡子塩島 健名古 靖森川 昭廣針谷 晃桑島 信竹内 東光
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p. 97-103

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抄録

 はじめに

 近年,明らかな根拠に基づいた医療,いわゆるevidence-based medicineの概念が治療方針の決定などに重要な役割を果たしている。Evidence-based medicineの推進により、医療の質の向上と標準化が図られ、地域や医師による診療内容のばらつきを極力減らすことが可能となる。また,他施設との比較に基づく業務内容の改善,いわゆるbenchmarkingも行われつつある。Evidence-based medicineにおいては,異なる状況下での結果の公正な比較が重要である。最も信頼性の高い比較法は,無作為割付試験による前方視的検討である。しかし,きわめて多数の対象症例数が必要であることや長期間を要することなどの制約が多いため,臨床の場では後方視的検討も重要である。後方視的検討では,対象を層別化(stratification)やリスク調整(risk adjustment)して,主な関心事以外の因子を統一した群間で比較することが必要とされる。集中治療分野では,リスク調整のために,重症度スコアとしてAcute Physiology, Age and Chronic Health Evaluation (APACHE)1-3)が開発され,重症度の客観的評価や,予後の予測に有用とされている。小児の集中治療においても1988年にPRISMスコア4)が発表された。新生児医療では,従来は生死を左右する最大の要因は児の未熟性であり,その指標である在胎週数や出生体重が重症度評価の代わりに使用されていた。しかし,周産期医療の進歩に伴い未熟性の強い児での生存率は著明に改善した5)。このため,在胎週数や出生体重のみでは重症度の評価として不十分な場合も考えられる。そこで欧米では,病的新生児の重症度を定量的に評価する目的でScore for Neonatal Acute Physiology6)(以下SNAPと略)およびClinical Risk Index for Babies7)(以下CRIBと略)が作成された。この結果,成人から新生児領域までの数種類の重症度スコアが集中治療の臨床研究における研究対象の層別化や多施設間,異なる年代間の成績の比較などに広く用いられている(表1)。新生児重症度スコアは在胎週数や出生体重よりも良好に生命予後を予測し6~8),重症度を基準にした,より的確な新生児集中治療の比較を可能にすると報告されている6~11)。しかし,これらスコアは欧米人を主な対象としており,日本人にも同様に利用できるかは不明である。そこで,当院のNICUに入院した極低出生体重児(以下VLBWIと略)の生存の予測に関するSNAPの有用性について検討した11)。加えて,SNAPを用いて,当院NICU整備前後のVLBWIの保育成績の比較を試みた12)

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© 2003 日本周産期・新生児医学会
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