主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:周産期における「遺伝」を考える
回次: 35
開催地: 大阪府
開催日: 2017/02/10 - 2017/02/11
p. 15-20
背景
周産期医療は,生殖,不妊,出生前診断,先天性疾患,未診断疾患等,遺伝医学の知識や経験を必要とする機会が非常に多い医療分野の一つである。近年の臨床遺伝医学の知見,技術の進歩は目覚ましく,従来不可能であった治療を可能にし,また予後を改善した。診断においては,より正確に,より早期に,より非侵襲的な方法で可能となってきている。このような医学の進歩は常に倫理的な問題をはらんでおり,きわめて慎重な対応が求められる。
特に出生前診断においては,非侵襲的出生前遺伝学的検査(non‒invasive prenatal genetic testing; NIPT)がわが国で行われるようになったことで,一般社会の関心も非常に高まってきた。当学会では,第51回学術集会において,特別企画として「出生前診断と生命倫理~NIPT時代にどう向き合うか」が取り上げられ,医師のみならずさまざまな立場の方たちとの議論が行われた1)。日本医学会のガイドライン2)では,出生前診断にあたっては,遺伝カウンセリングを行うこと,とされている。また,出生後に診断される重篤な疾患にも,遺伝カウンセリングは必要と思われる。
2016年4月に,日本遺伝カウンセリング学会から,「出生前遺伝カウンセリングに関する提言」が公開された3)。そこには,遺伝カウンセリングの重要性はもとより,一次施設での対応,個別の遺伝カウンセリング内容等も述べられている。さらに,妊娠期のケア体制やグリーフケアまで言及されている。このことは,もはや出生前診断と遺伝カウンセリングが,一部の患者,特定の疾患の枠にとどまらないことを示唆している。一方で,多忙な周産期医療の現場で,どのような遺伝カウンセリング体制がとられているかは明らかでなない。今回の周産期学シンポジウムのテーマが,周産期医療における「遺伝」を考える,であることから,周産期学シンポジウム運営委員会と倫理委員会では,共同研究事業として,重篤な疾患をもつ胎児・新生児として,18トリソミーに対する医療の実態,担当する医師の意識,さらに周産期施設における遺伝カウンセリング体制に関して全国調査を行うこととした。ここでは,遺伝カウンセリング体制に関しての結果を報告する。