主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:IUGR
回次: 7
開催地: 東京都
開催日: 1989/01/21
p. 101-107
はじめに
産科診療において,IUGRを妊娠早期に診断した後,IUGRを正常発育パターン内に修復させるために,早期治療を中心とした適切な母児管理が行われているが,いまだ確立された治療法がないのが現状である。
一方,ヒトをはじめ哺乳動物では,妊娠末期になると胎児肝臓で急激にグリコーゲンが蓄積され,このグリコーゲンの蓄積現象が出産というストレスに対する胎児予備能維持に関与している。
そこで本稿では,胎児肝におけるグリコーゲン糖代謝機構,すなわち肝グリコーゲン合成系の律速酵素であるglycogen synthetaseと分解酵素であるglycogen phosphorylaseの動態から,胎児の予備能としてのグリコーゲン貯蔵現象の意義を検討した。
さらに,酸化的リン酸化反応やATP生成に関与し,幼牛血液の抽出産物である,いわゆる組織呼吸促進作用を有するソルコセリルや肝glucose-6-phosphataseの活性を高め,肝からのブドウ糖放出を促進したり,肝における蛋白質からの糖新生を促進し,肝グリコーゲンを蓄積させる作用があるグルココーチコイド(デキサメサゾン)に注目し,これらのIUGR胎児に対する出生前治療の有効性を検討した。