主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム
回次: 8
開催地: 大阪府
開催日: 1990/01/20
p. 19-26
はじめに
HTLV-I (human T cell lymphotropic virus type I)は成人T細胞白血病adult T cell leukemia(ATL)の病因であり,HAM(HTLV-I associatesd myelopathy)1)を代表とするHTLV-I関連疾患群との関係も指摘されている。HTLV-Iの自然感染経路としては母乳などを介する母児感染,精液を介する男性から女性への男女間感染,輸血などによる医原性感染などが存在する。このなかで母児感染が次世代でのATL発症に深く関与しておリ,現在までのところ子宮内感染や産道感染の可能性も否定できないものの,その主な感染経路は母乳であると考えられている2, 3)。
このため母児感染予防法として母乳の遮断が一般的に実施されているが,母児感染での児のキャリア化に関しても一様でなく,また母乳哺育がもたらすさまざまな利点や妊婦を取り巻く問題などを考慮すると,その取リ扱いには多くの問題を抱えているように思われる。鹿児島県を含め南九州はATLの多発地域であるため,妊婦のHTLV-Iキャリア数も多く,HTLV-Iの母児感染の問題については,キャリア妊婦への告知を初めとして多くの問題を抱えている。
われわれは関連12施設の協力を得て,妊婦のHTLV-I抗体スクリーニングおよび出生児の追跡を行いすでに報告しているが4, 5),今回は一般妊婦およびキャリア褥婦の意識調査の結果や,南九州における母児感染の実態をもとに,児栄養法を含めたキャリア妊婦の取リ扱い方針について述べる。