主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム
回次: 8
開催地: 大阪府
開催日: 1990/01/20
p. 27-35
human T lymphotropic virus type-I1)(以下HTLV-Iと略す)が,ATL患者の末梢血リンパ球と臍帯血リンパ球との混合培養により樹立された細胞株MT-12)より発見され,このウイルスの感染が成人T細胞白血病(ATL)3)発症の原因であることが,疾病疫学的に証明された。一般には,このHTLV-Iに感染することにより,感染者血清には抗HTLV-I抗体4)が認められるようになり,HTLV-I感染者の検索は,この抗体の有無を知ることによりなされている。一方,このHTLV-I感染が生起した個人が,すべてATLを発症するわけではなく,ATL患者はHTLV-I感染者(以下HTLV-Iキャリアとする)のごく一部の人のみが,リンパ球の異常増殖,生体物質であるサイトカインの異常産生を基本とした免疫機能の異常を惹起し,ATLという疾患に至るものであることは,疫学的研究がこれを証明している。すなわち,ATL患者を中心としたHTLV-Iキャリアの存在を家系樹により検索した結果5, 6)では,家族内に多くのHTLV-Iキャリアを擁していることが示され,またこのウイルスの感染様態が家族内においても極めて濃厚な接触を有する間でのみ発生していることが示されている。この家系樹によりHTLV-I感染には,母児感染とともに夫婦間感染(多くは男性から女性への)が主たるものであることが証明されている。