主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:自己免疫疾患合併妊娠
回次: 9
開催地: 東京都
開催日: 1991/01/20
p. 111-122
はじめに
idiopathic thrombocytopenic purpura(ITP=特発性血小板減少性紫斑病)はautoimmuneもしくはimmune thrombocytopenic purpura(免疫性血小板減少性紫斑病)ともいわれており,その基本的病態は図1に示すように血小板膜糖蛋白(GP)のGP I b, GP II b/III aなどに存在する血小板自己抗原に対して,脾臓や他のリンパ組織・骨髄などで何らかの機序によって自己抗体が産生され,この抗体が血小板と結合し,脾臓などの網内系のマクロファージに貪食され,血小板寿命が著しく短縮し,血小板減少が引き起こされるのが主因と考えられている。
本疾患は他の自己免疫疾患と同様に若年女性に比較的好発する傾向があり,分娩をはじめとする出血を避けることのできない周産期においては母児管理が大きな問題となってくる。
そこで本論文では,まずITPの疫学を含む病態について論じた後,当科での20症例(表1)の経験をもとにした,現在われわれが行っているITPの母児管理方法について述べることとする。