抄録
脳卒中片麻痺の長下肢装具は,体重支持の強固な装具と歩行しやすい柔軟な装具が理想であるが,その両立は不可能である.独自開発理論に基づく本プラスチック長下肢装具(P. KAFO)の特徴は,立脚期の荷重で捻れ,遊脚期に復元する,いわゆる「捻れる長下肢装具」(プラスチックの可撓性で装具全体が制動的に支持する装具)である.この捻れる長下肢装具は,患者歩行病態や体重によって装具のデザイン(下腿に窓を開ける,足・膝継手,上・下位支柱部の幅調節,プラスチック板の厚みの変更など)を変更し,おのおののケースにあった強い装具,または柔軟な装具と調節して製作する.片麻痺歩行病態が多種多様である限り,装具の特性もあらゆる歩行病態に対応できることが望まれる.さらに麻痺した下肢には,装具による機械的矯正だけではなく,歩行ファシリテーション(促通)ができる治療用下肢装具の特性が重要であると考える.我々は「物」の開発も重要だが,むしろその物をいかに使いこなし,最大効率の治療的歩行運動学習を行うか(片麻痺歩行の治し方)に言及した文脈で報告する.