抄録
近年、民間資金を活用したインフラ整備事業への投資が、世界中で多く見受けられるようになっている。インフラ事業への投資は、その長期性・安定性などから、投資ファンドや年金基金などの機関投資家が、ローリスク案件として運用資産の一部を配分する傾向がある。一方、インフラ事業へ投資を行うためには、インフラ構造物の資産価値が投資額を上回ることを確認しなければならない。ところが、一般的な公共事業における資産価値評価法は数多く提案されているのに対し、民間資金を導入したインフラ資産価値評価法はあまり多く見られないのが現状である。そこで本論文では、初めに一般的な公共事業の事業採択条件を示し、民間資金導入時のインフラ価値評価手法との比較を行う。次に、民間企業が運営権を買収したカナダHighway 407の事例を取り上げ、将来のキャッシュフロー一獲得に基づくインフラ価値算出方法における具体例を示し、そのシナリオ設定手法および価値評価手法について考察を加え、資産価値評価の不確実性とその支配的リスク要因について評価を行った。