抄録
転移性脊髄腫瘍による対麻痺例に対してロボットスーツHybrid Assistive Limb福祉用(HAL)を用いた理学療法を行い,その運用方法や治療効果を検討した.症例は47歳,女性で,疾患は乳癌・転移性脊髄腫瘍であった.HALを用いた理学療法を在宅復帰前に5日間連続して行い,在宅復帰後に週1回の頻度で行った.経過として,在宅復帰3カ月後の歩行能力の向上を認めたが,移乗・移動能力・日常生活活動・生活の質には変化がなかった.本例より,HALを用いた理学療法を継続して施行するには,長時間の端座位・立位保持能力と下肢筋力が欠かせず,患者がHALの操作を習熟することが重要と考えられた.また,HALを用いた理学療法は,歩行能力の向上に役立つ可能性があるものの,通常の理学療法との違いや適切な訓練量・期間などについては更なる検討が必要であると考えられた.