日本義肢装具学会誌
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30 巻, 2 号
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巻頭言
特集1 義肢装具の未来を創る―義肢装具士の卒後教育から
  • 野坂 利也
    2014 年30 巻2 号 p. 62-64
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    義肢装具士の国家試験受験資格のある養成機関の中で,現在,大学および大学校として4年間の教育が行われているのが,札幌,新潟,岩槻,三田,広島の計5校,3年間の教育をしているのが,恵庭,所沢,東京,名古屋,三田,熊本に6校ある.卒業後,有資格者として義肢装具製作事業所に勤務する方々が大多数を占めることとなるが,製作事業所経営者の方々が必要としている人材,将来の義肢装具士の卒後教育について考えてみたい.
  • 内田 充彦
    2014 年30 巻2 号 p. 65-69
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    質の高い義肢装具サービスには,専門職に対する適切なレベルの教育が必要である.国際義肢装具協会(ISPO)は,WHOと協働し,カテゴリー(CAT) I∼IIIの3つの養成目標レベルを推奨した.この理念は広く受け入れられ,教育プログラムの国際的な基準となっている.ISPOは,さらに世界各国の教育プログラムを評価し,それぞれがCATレベルに達するためのコンサルタントと認定を行っている.神戸医療福祉専門学校三田校が,2012年にCATIとして認定されたが,この過程の中で臨床教育の不足が指摘された.本稿は,国際的な基準からみた日本の義肢装具教育の課題を明らかにすることを目的としている.そこから,まずは世界的な基準に近づくための日本の義肢装具士の卒後教育についての提案を行った.
  • 植田 幸一
    2014 年30 巻2 号 p. 70-72
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    第29回日本義肢装具学会学術大会のシンポジウムでは,職能団体として,生涯学習の目的を述べるとともに,現段階での問題点や課題,今後行うべき具体的方法案などの戦略を紹介した.義肢装具士としてステップアップしていくために,卒後教育や生涯学習は,日本義肢装具士協会でもシステム化し体系的に提供することが必要とされている.今回は,当協会の今までの経緯を紹介し,生涯学習の必要性について述べる
  • 芳賀 信彦
    2014 年30 巻2 号 p. 73-76
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    リハビリテーション(リハ)医から医療現場における義肢装具士への要望として,(1)医師·理学療法士·作業療法士等とのコミュニケーション,(2)義肢装具に関する豊富な知識の提供,(3)多様な義肢装具への対応,またはそれへのアクセスに関する情報提供,が挙げられる.リハ医の卒後教育は専門医制度と結びついており,卒後研修プログラムには「義肢」,「装具·杖·車椅子など」,「訓練·福祉機器」の項目が含まれる.臨床現場に出て数年後に,専門医試験のために臨床経験を振り返り申請書類を作成し,試験に向けて幅広い勉強をすることは意味がある.また資格更新のために学会参加等を通じて,新しい,あるいは自分の専門外の知識に触れることも役立っている.
特集2 手のスプリントを創る―原点,今,そして未来へ
  • 大山 峰生, 土田 尚美
    2014 年30 巻2 号 p. 77-81
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    手の治療にとっては,拘縮をいかに予防,改善するかがかねてからの課題であり,その治療手段としてのスプリントの意義は大きく歴史は古い.なかでも第二次世界大戦は手外科の手術手技を発展させ,スプリント療法はハンドセラピィの中心的な治療手段となった.その後も手外科の進歩に伴ってスプリントの役割は拡大し,術後の早期運動療法が提唱されている昨今では,拘縮予防を目的とするスプリントの重要性が高まってきた.しかしながら,現在でも拘縮改善用のスプリントは不可欠であり,その発展が期待されている.現在,拘縮改善用のスプリントは,瘢痕の成熟段階によって使い分けるのが一般的であるが,拘縮に対する至適矯正力や矯正時間,動的,静的スプリントの使い分け基準等は不明であり,これらの解明が今後の課題である.
  • —上肢末梢神経障害を例にとって—
    園畑 素樹, 馬渡 正明
    2014 年30 巻2 号 p. 82-84
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    上肢スプリント作製には,病態生理と機能解剖の把握が重要である.上肢神経障害を例にとると,正中神経の障害である手根管症候群では母指球の萎縮により「猿手」と呼ばれる変形を認める.しかし,母指球全体が萎縮するわけではない.母指球を構成する筋肉には尺骨神経支配の筋肉も存在する.また,尺骨神経麻痺では「鷲手」と呼ばれる変形をきたす.鷲手変形では環指・小指DIP・PIP関節の屈曲とMP関節の過伸展を認める.病態の本質は,環指・小指の虫様筋の麻痺によるMP関節の過伸展であり,その結果としてDIP・PIP関節の屈曲が生じる.上肢疾患の病態生理,機能解剖の熟知により,より機能的であり患者のコンプライアンスの高いスプリント作製につながると考える.
  • 田崎 和幸, 野中 信宏, 山田 玄太, 宮﨑 洋一, 貝田 英二
    2014 年30 巻2 号 p. 85-90
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    ハンドセラピィ領域におけるスプリント療法は,必要不可欠な治療手段の1つである.当院手外科センターでは,6名のセラピストで1カ月に約70のスプリントを作製しており,その取り組みの一部を提示する.セラピスト作製スプリントの長所は,症例の状態に応じてすぐに作製・修正・変更して装着できることであり,短所は恒久性に乏しいこと,基礎知識や作製技術に差があり全ての施設で作製できていないこと,診療報酬点数が定められていないことが挙げられる.そのため我々は,スプリント療法を併用したハンドセラピィによってuseful handを獲得していきながら,教育システムの構築や研究の集積を図っていかなければならないと考える.
原著
  • 村山 稔, 加辺 憲人
    2014 年30 巻2 号 p. 91-95
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中患者139名を対象に,単変量解析と信号検出分析法を用いて,回復期病棟へ入院後1週間以内に行われる臨床評価のうち,入院より1カ月以上にわたり長下肢装具を使用する場合を効果的に予測できる評価要因の組み合わせと,その最適カットオフ値を分析した.採択された要因は,年齢とFIMのベッド・椅子・車いすの移乗の得点および機能的バランス指数で,組み合わせの1例としてFIMのベッド・椅子・車いすの移乗1点かつ年齢63歳以上の場合には,87.5%が長下肢装具を1カ月以上使用すると予測された.入院から1カ月以上,長下肢装具を使用するか否かの予測が可能になると長下肢装具の処方の遅延が減少することが期待される.
短報
症例報告
  • 西尾 大祐, 前島 伸一郎, 大沢 愛子, 平野 恵健, 木川 浩志, 丸山 仁司
    2014 年30 巻2 号 p. 100-104
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    転移性脊髄腫瘍による対麻痺例に対してロボットスーツHybrid Assistive Limb福祉用(HAL)を用いた理学療法を行い,その運用方法や治療効果を検討した.症例は47歳,女性で,疾患は乳癌・転移性脊髄腫瘍であった.HALを用いた理学療法を在宅復帰前に5日間連続して行い,在宅復帰後に週1回の頻度で行った.経過として,在宅復帰3カ月後の歩行能力の向上を認めたが,移乗・移動能力・日常生活活動・生活の質には変化がなかった.本例より,HALを用いた理学療法を継続して施行するには,長時間の端座位・立位保持能力と下肢筋力が欠かせず,患者がHALの操作を習熟することが重要と考えられた.また,HALを用いた理学療法は,歩行能力の向上に役立つ可能性があるものの,通常の理学療法との違いや適切な訓練量・期間などについては更なる検討が必要であると考えられた.
講座 義肢装具発展の歴史とこれからのあり方―次世代に受け継ぐべきもの―
  • 田澤 英二
    2014 年30 巻2 号 p. 105-112
    発行日: 2014/04/01
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    義肢装具の歴史,発展は必要とするニーズに関連している.紀元前の頃から,戦争と貧困は身体障害の原因であり,医学の発達とともに義肢装具に求められるものも向上してきている.長い歴史を見てみると2000年以上も義肢装具形態の大きな変化は見られないが,現在では,材料,電子工学,さらには人間工学を駆使した義肢装具が使用されるようになって切断者のQOLは健常者に近いものとなっている.1957年にドイツで開発された薬物のサリドマイドによって起こった先天性欠損児の問題のために,1968年に“動力義手実用化特別研究班”が組織され早稲田の加藤一郎研究室をはじめとして開発が行われたが,結局は不成功に終わってしまった.しかし,その加藤研究窒は工業ロボット研究開発の基盤をつくり,これから日本が対応を迫られる高齢化支援のロボテクに社会が大きな期待をしている.
印象記
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