2015 年 31 巻 4 号 p. 262-267
高齢者や人工膝関節全置換術(以下,TKA)術後患者は,加齢による脊柱後弯・骨盤後傾の姿勢変化を生じることが知られている.この姿勢変化は,歩行能力やバランス能力を低下させ,転倒の危険性を高める可能性がある.この問題を解決するために,我々は,抗力を具備した継手により連結した体幹装具Trunk Solution(以下,TS)を開発した.TSは骨盤前傾を促し,腹筋群の筋活動を増大させる効果を有する.本研究の目的は,TSが高齢者とTKA術後患者の歩行能力・バランス能力に与える影響をパフォーマンステストにより明らかにすることである.結果として,TS装着前と比較してTSを外した直後に高齢者,TKA術後患者ともに5m歩行時間が有意に短縮し,高齢者の一部で片脚立位保持時間が有意に増加した.TSの使用により,高齢者やTKA術後患者の歩行能力やバランス能力が向上することで,転倒予防につながることが示唆された.