土壌の物理性
Online ISSN : 2435-2497
Print ISSN : 0387-6012
塩化鉄(III)を用いたオンサイト化学洗浄による カドミウム汚染土壌の修復 ―化学洗浄が土壌理化学性およびオクラ (Abelmoschus esculentus)の生育に及ぼす影響―
赤羽 幾子牧野 知之加藤 英孝中村 乾関谷 尚紀神谷 隆高野 博幸
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2013 年 123 巻 p. 55-63

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抄録
塩化鉄(Ⅲ)を用いた化学洗浄法は,Cd 汚染農地から Cd を除去し,修復するために開発された技術である.本研究では塩化鉄(Ⅲ)を用いたオンサイト(現場)洗浄を Cd 含量の高い圃場(礫質灰色低地土,0.1 M HCl 抽出 ‒Cd 含量:0.56 mg kg‒1,粘土含量:0.15 kg kg‒1,陽イオン交換容量:13 cmolc kg‒1)で実施し,洗浄処理が土壌理化学性とオクラの生育に与える影響を調査した.化学洗浄では強度の代かきを行うため,洗浄翌年の耕起前の土壌の一軸圧縮強度と耕うん後の土塊径分布に好ましくない影響を与え,砕土性が低下した.オクラの出芽と生育にも負の影響が見られた.しかし,これらの影響は持続的なものではなく,栽培 2 年目と 3 年目には土塊径分布やオクラの生育は洗浄区・無洗浄区の間にほとんど違いがなかった.一方,洗浄区のオクラ果実中 Cd 含量は無洗浄区の 0.3 ~ 0.5 倍と一貫して低く,化学洗浄による Cd 吸収抑制効果の持続性が認められた.化学洗浄は作土からのマグネシウムとカリウムの損失をもたらしたが,これらは化成肥料や土壌改良資材の施用で矯正可能と考えられる.以上より,塩化鉄(Ⅲ)を用いた化学洗浄は,Cd 汚染土壌の修復によるオクラの Cd 吸収リスク軽減に有効な技術であることが明らかとなった.
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© 2013 土壌物理学会
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