2022 年 38 巻 2 号 p. 110-115
脳卒中患者において立位で膝関節の伸展保持ができないことは,運動療法の選択の大きな決定因子になる.廃用症候群に陥りやすい遷延性意識障害などの重症例に対しては長下肢装具を用いた立位・歩行による感覚刺激で大脳皮質の覚醒を促す.さらに歩行再建に向けて長下肢装具で膝を固定した上で,股関節に主眼を置いて足関節の動きを伴った積極的な立位・歩行練習を行う.立脚中期~後期に臼蓋から突出した大腿骨頭と伸張された大腰筋とのせめぎ合いこそがヒトの姿勢制御の根幹を作っている.股関節への荷重と筋紡錘の伸張によるこの脊髄小脳路と橋網様体脊髄路の活性化で得られる姿勢制御の場面を作るためには膝の支持性は不可欠である.