日本義肢装具学会誌
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38 巻, 2 号
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巻頭言
特集 モノづくりとリハビリテーションのマッチング
  • 吉尾 雅春
    2022 年 38 巻 2 号 p. 110-115
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    脳卒中患者において立位で膝関節の伸展保持ができないことは,運動療法の選択の大きな決定因子になる.廃用症候群に陥りやすい遷延性意識障害などの重症例に対しては長下肢装具を用いた立位・歩行による感覚刺激で大脳皮質の覚醒を促す.さらに歩行再建に向けて長下肢装具で膝を固定した上で,股関節に主眼を置いて足関節の動きを伴った積極的な立位・歩行練習を行う.立脚中期~後期に臼蓋から突出した大腿骨頭と伸張された大腰筋とのせめぎ合いこそがヒトの姿勢制御の根幹を作っている.股関節への荷重と筋紡錘の伸張によるこの脊髄小脳路と橋網様体脊髄路の活性化で得られる姿勢制御の場面を作るためには膝の支持性は不可欠である.

  • 浅見 豊子
    2022 年 38 巻 2 号 p. 116-121
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    『関節リウマチ診療ガイドライン2020』が発刊された.バイオ後続品を含むbDMARD, JKA阻害薬等の新規薬剤や手術治療・リハビリテーション治療に対する推奨,薬物治療および非薬物治療・外科的治療のアルゴリズムの作成,医療経済学的評価,患者の価値観・意向の検討など多面的に記載され,RA治療の進歩を感じとれる内容である.しかし一方,『リウマチ白書2020』では「主治医に装具やリハビリについて処方・助言してほしい」という声が18%存在する.RAの治療についてはより一層の進展が期待されるところであるが,患者や家族の声に日頃より耳を傾け,リハビリテーション治療の1つである装具療法の視点からもしっかり支援することが望まれる.

  • 大畑 光司
    2022 年 38 巻 2 号 p. 122-125
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    情報通信技術(Information and Communication Technology:ICT)の発展に伴い,この技術を活用したTele-Rehabilitationの進展が期待されている.このため,現場におけるこの取り組みのエビデンスをまとめ,今後必要となる技術的な課題についてまとめた.特に,対面での介入と比較して課題となる運動に対する評価,治療の運動学的な情報について,新規の技術が必要になる可能性について論考した.

  • —介護ロボット開発等加速化事業にみる可能性と課題—
    小林 毅
    2022 年 38 巻 2 号 p. 126-131
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    わが国では,「ロボット新戦略」以降,様々な分野でロボット技術を活用してきた.しかし,「介護ロボット」の分野では,介護現場と開発メーカーのミスマッチからなかなか普及しなかった.厚生労働省では,「介護ロボット開発等加速化事業」により開発の着想段階から上市した製品の活用方法と介護技術を一連の流れとした事業に位置付け,プロジェクトコーディネーターの育成・配置を図ったが,課題が山積している状況にある.義肢装具が関連する障害福祉の分野でも同様の課題があり,利用者のニーズを汲み取り,開発につなげるだけではなく,その製品を使いこなせるようなコーディネートができる人材の育成も本学会の役割であることを提案した.

  • —ICFの概要と臨床実践—
    井上 剛伸, 柴田 八衣子, 柴田 晃希, 石渡 利奈, 阿久根 徹, 藤原 清香, 酒井 勇雅, 大庭 潤平
    2022 年 38 巻 2 号 p. 132-137
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    国際生活機能分類(ICF)は,医療や福祉の分野での活用が広がっている.一方,義肢装具分野の利用はまだ十分とはいえない状況である.本稿ではICFを概説するとともに,義手および義足の臨床場面での活用事例を紹介した.さらに,ICFに基づく義肢装具のマッピングの状況から,その特徴と位置づけについて提案を示した.これらより,義肢装具分野でのICFの活用の可能性や重要性を提起した.

特別寄稿
  • 木之瀬 隆
    2022 年 38 巻 2 号 p. 138-143
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    介護保険のシーティングが2021年4月より始まり,いわゆる高齢者のシーティングが一般化される年となった.高齢者ケアにおけるシーティングとは,「体幹機能や座位保持機能が低下した高齢者が,個々の望む活動や参加を実現し,自立を促すために,椅子や車椅子等に快適に座るための支援であり,その支援を通して,高齢者の尊厳ある自立した生活の保障を目指すもの」と定義されている.また,「椅子に座る」という暮らしの保障が記載されている.1989年に座位保持装置が補装具に入り,2017年に回復期リハビリテーションでシーティングが算定できるようになり,そして介護保険にシーティング入った.それらについて経緯と介護保険のシーティングを解説し,また,先駆的にシーティングを実践している介護老人福祉施設の取り組みを紹介する.

海外招待講演
短報
  • 三ツ本 敦子, 中村 隆, 丸山 貴之, 沖田 祐介, 飛松 好子
    2022 年 38 巻 2 号 p. 148-151
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    下肢切断術後の断端は,術後から12~18カ月頃に至るまでの間に形状,容積ともに大きく変化すると報告されているが,断端内部の組織変化に関する研究は少ない.そこで,義足歩行訓練前後の大腿切断者の筋断面積の変化に着目し,調査を行った.片側大腿切断者4名に対し,義足歩行訓練後で断端の坐骨直下の核磁気共鳴画像を取得し,断面積を算出した.その結果,総断面積に占める筋断面積の割合は,全ての対象者で増加していた.そして,断端の股関節周囲の運動方向別に筋断面積の割合は変化し,前外側筋群は萎縮する傾向が見られ,内側筋群と後方筋群の断面積は増加する傾向が見られた.

症例報告
  • 柴田 晃希, 藤原 清香, 奈良 篤史, 真野 浩志, 越前谷 務, 野口 智子, 滑川 可奈子, 芳賀 信彦
    2022 年 38 巻 2 号 p. 152-158
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    尺側形成障害患者の義手の使用についての報告は少なく,義手の使用が日常生活活動(以下,ADL)に及ぼす影響についても明らかとなっていない.われわれは16歳で初めて義手の使用を希望した片側の尺側形成障害患者に対して,義手および上肢装具の処方,適合・製作,装着訓練を行った.本患者は患側肘関節の著しい可動域制限と手指の欠損があったが,ADLは健側手と患側肢による把持動作の代償により制限がなかった.そのため義手の使用が習慣化するためには本人のADLに必要とされる義手の機能を顕在化させることが必要であった.現在,本患者は日常生活における装飾用上腕義手の装着が定着し,両手動作時や机上での作業時に使用している.今回,日常生活における義手の使用による,本患者のADLおよび心理的側面の変化について報告する.

調査・研究報告
  • 山重 太希, 浜辺 政晴, 勝平 純司, 藤好 泰弘
    2022 年 38 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    回復期の脳卒中片麻痺患者に対して機能的電気刺激療法(FES)とTrunk Solution(TS)の併用の効果を検討した.対象者は回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中片麻痺患者11名,介入期間は各4日間のABAデザインで12日間実施した.評価時期は実施前,A1期,B期,A2期の4回実施した.評価項目は歩行速度,歩行率,関節角度,脳卒中機能評価法(SIAS),足関節角度,臨床的体幹機能検査(FACT)とした.結果はFES単独と比較してFESとTSの併用は,歩行速度に有意な改善がみられた.また,FESとTSの併用の効果が得られやすい特徴として,体幹機能の低下がみられた.回復期の体幹機能が低下している脳卒中片麻痺患者に対して,FESとTSの併用はFES単独と比較して歩行速度の改善が得られる可能性が示唆された.

  • 田代 耕一, 遠藤 正英, 橋本 将志
    2022 年 38 巻 2 号 p. 167-170
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    脊椎圧迫骨折に対する主要な治療の1つに装具療法がある.体幹装具は体幹を固定し,早期からのリハビリテーションを可能とすることで過度の安静による廃用症候群を予防する.しかし,体幹装具の作製には時間を要すため,装具作製期間中に廃用症候群をきたす可能性がある.そこで体幹装具の作製期間に装着が可能な調節式体幹装具を作製し,その装具の適応とその固定力の検討を行った.健常成人および脊椎圧迫骨折を発症し脊椎に円背などの変形をきたした症例にも装着が可能であり,他の体幹装具と比較しても同等の固定力を有していることが考えられた.

  • 中村 隆, 阿久根 徹
    2022 年 38 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    上肢切断者および形成不全児・者23名を対象に筋電電動義手の使用状況と情報に関するアンケート調査を実施した.調査対象者の64%が筋電電動義手を日常的に使用しており,主な使用目的は仕事・学校での使用であった.使用者の79%が週5日以上使用していたが,1日の使用時間は成人が平均11時間に対し,小児は平均2時間であった.使用者の79%が義手に満足・ほぼ満足と回答し,筋電電動義手が使用者の生活で十分活用されていることが示された.情報取得経路については,主に義肢装具士から情報を得ていたが,インターネット等からの情報取得も少なくなかった.対象者の多くが使用者同士の情報交換が重要と認識しながら交流機会がほとんどないことが課題であった.

講座 感染症対策
  • 山口 諒
    2022 年 38 巻 2 号 p. 177-182
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2023/04/15
    ジャーナル フリー

    感染対策において,消毒薬の適正使用はきわめて重要である.感染対策に必要な消毒薬の基本知識として,「滅菌」「消毒」「殺菌」「除菌」「抗菌」などの用語の使い分け,消毒の3要素(濃度・温度・時間),微生物の抵抗性,各消毒薬の分類・特徴が挙げられる.消毒薬の分類・特徴を理解する上で使用目的の感染リスクに応じて処理するというスポルディングの器具分類の考え方が重要となる.消毒薬は高水準,中水準,低水準に分けられ,それぞれ作用や注意点などが異なる.新型コロナウイルスに対して有効な主な消毒薬としてアルコール(70%以上)と0.05%次亜塩素酸ナトリウムが挙げられる.消毒薬を使用する際は基本事項を理解し,使用方法,有効成分,濃度,期限,注意点などを十分確認した上で,目的に合ったものを正しく選ぶことが重要である.

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