日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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シロイヌナズナ葉緑体RNase R欠損株2627-2の解析
*岸根 雅宏高林 厚史宗景 ゆり鹿内 利治佐藤 文彦遠藤 剛
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p. 133

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抄録
葉緑体遺伝子発現は核による制御を受けており、中でも転写産物のプロセッシングを含む転写後制御は重要である。これらの葉緑体遺伝子発現に関わる変異株の選抜のために、光合成電子伝達の状態を反映するクロロフィル蛍光を用いることが有効である。我々はこれまでにシロイヌナズナのM2植物約50,000株から、クロロフィル蛍光に異常を示す変異株を59株単離してきた。その中の一つ2627-2と名付けたT-DNAタギング株は、葉緑体に移行すると予想されるRNase Rをコードする遺伝子に挿入を持っていた。そこで2627-2株における葉緑体のRNA代謝について解析を行った。その結果、葉緑体RNAのうちでrRNA前駆体に明らかな蓄積が認められ、一方その成熟rRNAは減少していた。また、葉緑体mRNAのうちで、葉緑体コードRNAポリメラーゼ (PEP) によって転写されるmRNAには量的な変化が見られなかったが、核コードRNAポリメラーゼ (NEP) 制御のものの蓄積が2627-2株で増加していることを認めた。これらの結果は、2627-2株では葉緑体RNase Rの欠損によるrRNAのプロセッシング異常により、葉緑体リボソームの翻訳活性が低下し、葉緑体遺伝子発現に変化をきたしていることを示唆しており、現在さらなる解析を行っている。
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© 2003 日本植物生理学会
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