抄録
緑色硫黄細菌Chlorobium tepidumのアンテナ複合体「クロロゾーム」は、光エネルギーを捉えて、光反応中心に一重項エネルギーを伝達している。クロロゾームの光保護作用と励起状態のダイナミクスを解明するために、サブピコ秒~ミリ秒の時間領域でポンププローブ時間分解吸収分光を用いて測定を行った。
∼400 nm, 0.12 psのパルスを用いたサブピコ秒~ナノ秒の時間領域での実験では、一重項-一重項消滅反応と同時に一重項分裂反応や三重項-三重項消滅反応といった二分子反応が観測された。また、355 nm, 12 nsのパルスを用いたサブマイクロ秒~ミリ秒の時間領域での実験では、piggy-back dimerへのクロロゾームの解離が各励起状態反応の後に起こり、クロロゾームの構造は∼20 ms以内に再構築されることが分かった。クロロゾームの二次元的なシリンダー状の会合構造が、一重項-一重項消滅反応の後に起こるSoretやQy状態からの初期の誘導放出あるいは一重項分裂反応や三重項-三重項消滅反応の後に起こるQy状態からのその後の誘導放出のどちらかを通して効率的な放射エネルギー散逸を促進している。また、内部転換過程によって生成する余剰の熱エネルギーは、クロロゾーム特有の会合構造による効率的な光捕獲作用の瞬間的な停止が引き金になっているようである。