日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
会議情報

グリシンベタインはストレス条件下で光損傷後の光化学系IIの修復能力を向上させる
*大西 紀和村田 紀夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 4

詳細
抄録
グリシンベタイン(ベタイン)は適合溶質(compatible solute)の一つで、様々な生物種でストレス条件に応答して細胞内に蓄積される。これまでの形質転換株を用いた解析から、ベタインが様々なストレスに対する耐性を与えることが示されてきている。しかしながら、耐性獲得の詳細な分子機構については不明な点が多く残されている。
codA遺伝子は、ベタイン合成酵素の一つコリンオキシダーゼをコードしている。codAを導入したラン藻Synechococcus sp. PCC7942は、コリン存在下でベタインを合成し細胞内に蓄積することができ、塩と低温ストレスに対する耐性を獲得している。この株を用いた解析から、低温条件下(20oC)ではベタインによって光化学系II(系II)の光損傷後の修復が促進されることが示された。しかしながら、通常の生育温度(34oC)で強光照射を行ったところ、ベタインによる大きな効果は認められなかった。このことは、通常の生育温度では系IIの修復は十分に行われており、ベタインによるそれ以上の促進は起らないことを示している。低温や塩は系IIの修復を阻害するが、おそらくベタインはこの阻害を抑制する働きがあると考えられる。現在、塩ストレス条件下での光阻害について解析を行っているところである。
著者関連情報
© 2003 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top